回転率は度外視? 大行列でも時間制限なしでゆったりと楽しめる

コロナ禍で時短営業やテイクアウトのみの営業を強いられた店舗もあったそうだが、それでも商業施設内の一部店舗を除き路面店は営業を続けたという。それを可能にしたのが、食券制とセルフサービス化による少人数営業だろう。入店の際に食券を購入し、着席する。ステーキが届くまでの間に、ドリンクやライス、スープ、サラダを自ら取りに行くというシステムだ。筆者が訪れた吉祥寺店も調理とホールを合わせて5人のスタッフによって営業していた。

また「やっぱりステーキ」の特徴に、回転率を意識していないということも挙げられるだろう。席数は全部で35席。うちテーブルが18席、テラスが10席で、カウンターは7席のみ。大行列の2時間待ちでも座席の時間制限はなく、ゆったりと食べることができる。実際、友人と訪れワイワイと話しながらステーキを楽しむ客の姿が目に付いた。もちろんカウンター席で1人自分のペースでステーキを食べることもできる。

そして注目すべきは「替え玉」ならぬ「替え肉」が可能だということだ。注文したステーキを食べ切ったあとに、100g単位でステーキを追加することができる。しかも最初に注文した肉に限らず、好きな肉をオーダーすることができるのだ。

筆者も100gならばということで、ミスジ肉より少し高価なイチボ肉を「替え肉」した。こちらは歯応えがあり、かめばかむほど味が染み出してくる。こうやって別の味を少しずつ楽しむことができるのはうれしい。肉を存分に楽しんで帰ってもらいたいという店の姿勢の表れなのだろう。サッと食べてサッと帰る「ファストフード」的な店づくりをするのではなく、店にいる時間をどれほど満足に過ごせるかという、店で過ごす時間の幸福度を最優先にした店づくりなのだと感じられた。

無敵「やっぱりステーキ」今後にむけての課題は

仙台や愛知、福岡といった大都市でも直営店舗が成功を収めているとはいえ、東京の地価はばかにならない。例えば「やっぱりステーキ仙台一番町店」のある仙台市青葉区一番町の坪単価は約427万円だが、「やっぱりステーキ吉祥寺店」のある吉祥寺南町の坪単価は約551万円だ。回転率を上げない店づくりで利益を生み出すことはできるのだろうか。

「現在テーブルの稼働を1日60%前後まで下げています。ただ回転率についていえば、1日20回転近くと問題ないレベルです。また利益についても一般平均の利益は出ていて、理由としては、第一に人件費がほかの飲食店と比べて安いことが挙げられます。約18%で、慣れてくると15%前後で運営できます。第二に、東京では固定費がかさむのは事実ですが、実は野菜や消耗品などが安く変動費が沖縄より低いので、一概に営業が無理ではないのです」

「やっぱりステーキ」運営の株式会社ディーズプランニングに問い合わせたところ、代表取締役社長・義元大蔵氏ご本人からご丁寧な回答をいただけた。今後、東京での店舗拡大が注目されるが、義元氏はこうも話す。

「基本的に東京で大量出店しようとは思っていません。地方に根を張ってその土地に住んでいる方が気軽にいつでも入れるお店にしたいと思っています。その地方で売り上げを確保するためには東京からの発信力が必要。東京以外に50店舗ありますので、広告等も東京から発信する方が効率良いとの考えたうえでの東京出店です」