親も子も、これからさらに「安定志向」が強まる?!

家族構成や進路によっては費用を親が全額捻出できない可能性も高まった。となれば、大学まで「オール国公立」、しかも浪人せずにストレートで進学するのがベストとなろう。

もし、希望の国公立に進学できなければ、レベルを下げて、より安全圏の私大などを狙うことになる。偏差値が上のランク層がチャレンジしないとなると、その下のランク層も順繰りに下げざるを得ない。そう考えていくと、将来の子どもの選択肢の幅を広げるために、やはり理想的には小さいうちから学力を身につけておくべきだが、家計も厳しい、というジレンマに陥る家庭は多い。

無論、お金をかけることが、必ずしも子どもにとってよい結果をもたらすとはと限らない。これまで筆者は、お金に糸目をつけず大切に育てた子どもが、結果的にニートや引きこもりになった事例を目の当たりにしてきた。彼らは、親が自分にお金をかけること、つまり親のスネをかじることを当たり前と思っているケースが多く、いつまでたっても自立できない。

基本的に子どもの教育に見返りを期待してはいけない。そもそも教育費ほど、コストパフォーマンスが悪いものはないとすら思う。だが、子育てが計算通りに進まないとはいえ、できるだけコスト(教育費)をかけずに、納得のいくパフォーマンス(学歴)を得たいというのが親の本音だろう。

筆者はコロナ禍で外出自粛が続く今年5月、2人の子どもを地方の公立中高から国立医学部と東大大学院に進学させた母親に取材した。

公立中高・塾なしで息子2人を「医学部&東大」に入れた母親の技

大矢みどりさん(仮名・50代)は、ある地方都市に住み、公務員の夫(50代)との間に2人の子どもがいる。長男は、今年、地元の国立大学医学部を卒業し、東京都内の病院に研修医として勤務している。次男は、現在、東大大学院に在籍中だという。

聴診器に手をかける若い医師
写真=iStock.com/SIBAS_minich
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みどりさんは、元高校の教師だったが、次男の育休明けを待たずに退職した。「とにかく自分の手で子育てをしたかったんです」と振り返る。

長男も次男も小学校の頃からサッカー漬けの毎日。県の代表チームに選ばれるなど、平日夜や土日も練習があり、みどりさんも送迎や付き添いで、ずっと忙しかったという。

それでも、みどりさんいわく「私の子育てのモットーは、『選択肢を狭めないこと』。最初から医学部や東大を目指していたわけではなく、もし、子どもが私立中学に進みたいといった時に困らないよう、中学受験も視野に入れました。サッカーと両立するのが大変でしたが、2人とも小学校4年生から通塾させました」。

ところが、長男は自分で私立中学には進学しないと決め、本来であれば、志望校を絞り、必死に勉強に励むはずの小6の夏に塾を辞めた。第一志望の私立中学では、サッカーがあまりできなくなるからだ。長男に続き、次男も塾を辞めることになり、兄弟で、そのまま公立中学に進学。2人とも中学校では、部活動ではなく地元のサッカー強豪クラブチームに所属。受験直前の12月までサッカーを続けていたという。