1人あたり年44時間分の業務を短縮できる

埼玉県深谷市は、同県北部にある人口約14万人の都市だ。2024年に刷新予定の新1万円札の“顔”となる渋沢栄一の生誕地で、「深谷ねぎ」でも有名だ。

同市がLoGoチャットを導入したのは、まだトライアル期間だった2019年9月だった。市役所や市の関連施設で働く全職員(非常勤職員を含む)1142人にアカウントを付与して活用を始めた。

今年4月21日に深谷市とトラストバンクが発表した試算では、活用の結果、職員1人あたりの平均削減時間は「1日約11分(年間勤務日の240日で換算すると44時間)」となった。

特に効果があったのは「日程調整」で、従来は個別メールでやりとりしてきた日時の予定調整を、グループチャットの日程調整機能を活用することで時間削減につながった。試算では、こうして削減できた時間を全職員に当てはめると、年間2億円を超える人件費削減(労働時間減を人件費に換算)につながるという。

また同じく導入した、大阪府泉大津市からは、「市で、新型コロナの感染者が出た際に、市長メッセージ発信や感染者に関する情報を、市の公式サイトにアップ。場合によっては学童保育や保育所といった施設を閉鎖するなど、対応する部局が広範囲にわたるため、同時に即座にもれなく全部局で情報共有できるチャットのメリットを大きく感じた」という声が寄せられた。

LoGoチャットは1アカウントにつき月額300~400円。深谷市のように1000以上契約しても年間400万円ほどだが、現在はトライアル期間として2021年3月まで無料で利用できる。

「10万円給付」政策についても情報交換

一般住民の目線(消費者意識)で気になるのは、例えば新型コロナの支援対策である「現金一律10万円給付」が、チャット活用で迅速化するのか、といったことだろう。

「住民との直接やりとりで使われるツールではないため、こうした『金銭支給』の手続きを、LoGoチャットで行うことは想定していません。ただし、お伝えしたチャット内の『パンデミック対策ルーム』では、活発な意見交換もされています」(トラストバンク広報)

例えば、政府の支援策(コロナ対策では朝令暮改も多い)に、自治体がどう対応するかで迷うところを、先進的な自治体の取り組み例を参考にして、対応を進めた例がある。「10万円給付対策トークルーム」では、申請書の郵送方法はどうするかといった議論がされており、これまで自治体が単独で検討していた施策も、全国の自治体との情報交換でよりよい解決策につながっている。

LoGoチャットトークルームイメージ2
提供=トラストバンク
トークルームのイメージ。自治体を横断した情報共有が期待されている

このほか、保健所や保育所、学校、商工会議所等との感染者情報の共有によって、素早い情報公開をしたり、新型コロナに関する住民からの各種問い合わせに対する回答を、職員内で共有したりするケースもある。前述の泉大津市の認識とも共通する。

感染者が少ない自治体であっても、学校の一斉休校や10万円の支給は全国共通の対策だ。それぞれの課題ごとにトークルームがあるので、隣接県とも情報共有できるのは過疎地域にとってもメリットだろう。