手形は切るな、「カネ余り」の経営を目指せ

それと一倉教の特長は「手形を切るな!」ということである。

一倉先生の教えのもう一つが「会社は借金ではつぶれない。支払手形のみが会社をつぶす危険のある唯一の資金調達法である」(『経営心得』156ページ)と。

手形を切るから、手形が不渡りになり倒産する。だから手形を切らないと倒産する確率は下がる。

作間信司『一倉定の社長学』(プレジデント社)
作間信司『一倉定の社長学』(プレジデント社)

だが支払手形をゼロにするには何年もの時間をかけて徐々に手形を減らし、キャッシュフロー重視の経営に徹していかなければ実現できない。これについては財務に詳しい社長だったらよくわかる話だが、この経営法を続けていけば、「過剰流動性」(現預金が必要な水準を上回っている、いわば「カネ余り」の状態)の経営になっていく。バブル期のイメージが悪いのか、今は嫌われがちな経済用語である。

流動比率が200%、300%と、400%と、かつての一倉門下生の社長たちの会社なら決して珍しくない金持ち会社はごろごろいた。懐にたくさんのお金を持っていたのである。

それでも地元銀行からお付き合いで少しお金を借りて実質無借金、また、まったく無借金といろいろといらっしゃった。

経営分析を理解されている方であれば、「社長、こんなにお金を持っていたらもったいないですよ。月商売率の2倍持っていたらいいんですよ」と言うが、こうした社長はそんな発言には耳を貸さなかった。まだ、私も若かったので、「その分を投資されては」と話していた。恥ずかしい限りである。

しかし、それは平和な時の話。このたびのコロナ騒動のように、経済情勢が厳しくなった時には、流動性が一番である。お金を持っている社長たちが今回の場合も、銀行から一番、お金が借りやすかったのである。

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