音楽イベントは状況を見た冷静な判断を下す

音楽イベントはどうか。例年7月末開催の「フジロックフェスティバル」は、今年は本来の東京オリンピック期間を避けて8月21日~23日に新潟県湯沢町の苗場スキー場で開催される。4月3日には第2弾出演者発表やツアーバスの販売を始め、予定通り開催の準備を進めている。

山下達郎氏は、4月12日放送から自らのレギュラーラジオ番組をテレワーク=全編自宅での収録に切り替え、リスナーに「こういう時は冷静さと寛容さが何よりも大事」「正確な判断は冷静さからしか生まれません」と静かに訴えかける。また、7月5日までの公演中止を発表し、以降の公演については後日判断としている。

なるべく早く中止を決める流れになっている地域イベントも、音楽の興行ビジネスのように、個々に必要な準備期間と今後の状況を冷静に見ながら、最適な判断タイミングを見計らうことはできないだろうか。

「先が見えない」と言われる世界の状況は、中国の武漢市では2カ月半で封鎖が解除に、イタリアやスペインでも感染増加ペースの鈍化兆候が伝えられ、欧州の一部では行動制限の緩和が始まった。

厚生労働省のクラスター対策班のメンバーである西浦博北海道大学大学院教授の理論によると、潜伏期間を考慮しても接触8割減で1カ月程度、7割減なら2カ月弱で新規感染者数を一定水準(1日100名)以下に抑えられるという。

浅草は状況を見ながら実施判断を先送り

仙台では七夕飾りの制作が本番の半年前には始まっており、一部はすでに完成。ねぶた師たちが下絵から骨組みや電気配線へと制作を進めていた青森では、ゴールデンウイーク後の準備本格化に向けて3月下旬から組み立てが進んでいた大型ねぶたの制作拠点、「ねぶた小屋」の途中解体が始まった。「このタイミングで判断するのは経済的損失を少しでも少なく、運行団体の出費を少しでも抑える必要があるため」と、実行委員会は説明する。

対照的に、浅草では毎年5月開催の「三社祭」は中止をせず10月に延期を決めると共に、その実施可否も8月31日までに判断すると公表している。浅草神社と共に祭りを実行する浅草神社奉賛会の関係者は、「5月から10月への延期も3月末に決めた。毎年このくらいで準備しているから、10月開催も8月末に判断すれば(実施でも延期でも)間にあう」と言う。

写真提供=浅草観光連盟 365ASAKUSA
浅草の三社祭の様子

緊急事態宣言で方針に変わりはないかとの問いには、「それ以降は会合も自粛していますが、その方針は変わっていません」と答える。連日「第二次大戦以降で初」との見出しで各地の祭り中止が報道される中、2012年に700年祭を迎え、鎌倉時代から令和まで続く三社祭は、プランBを用意して、実施判断を最長4カ月後まで「予定通り」先送りする。