カオスの中で業績を上げるという発想を

【三宅】ビジネスにおける発信力といいますか、日本人のプレゼンスをどう高めるのかについて、ご提言はありますか。

【ロバートソン】これもやはり潔癖主義をやめることだと思います。キチキチに枠に収めようとせずに、カオスの中で業績を上げるという発想に切り替える。

【三宅】たとえば?

【ロバートソン】会議で意見の全員一致を目指さない、といった話です。日本人は人の顔色を伺ったり、調整を図る能力が高いので、多国籍チームがあったときに間をうまくとりもつことが上手な人が多いと思います。三方一両損や大岡裁きのように。

ただ、それをするには「完璧な合意などありえない」という前提に立つことが必要です。「みんなが合意するまで会議をする」といった発想を捨てないといけません。

「人は違って当たり前」と思えるか

【三宅】多様性を認めると。

【ロバートソン】まさに。昭和の時代に日本式の集団行動が機能していたのは価値観が1つだったからです。しかし、今は生きる目標や価値観に幅があって、端っこ同士だとお互いが理解できないぐらい社会の幅が膨らんでいます。

そもそも経済がこれだけグローバル化したので、日本の内側だけを見ていてもビジネスは成り立ちません。どうしても人件費の安いインドや中国、ベトナムに引っ張られるので、従来どおりに「歯を食いしばりながら努力する」ということを続けても、総中流社会を維持することはできません。世界の構造がそうなってしまったからです。

ですから、そこはベーシックインカムのような仕組みでセーフティネットを張る必要があると思いますが、一方では攻めていかないといけません。

そのときにポイントになるのが多様性であり、「多様性を受け入れて、どう強みにするか」が日本の将来を占うといっていいでしょう。

意見が違う人を排除するのではなく、「どうやったら共存できるか?」もしくは「相いれない価値観から第3の価値を生むか?」。アメリカは移民の国なので、そういうことをずっとやってきたわけですけど、いまの日本はその方法を学ぶことが急務です。

【三宅】「あの人、会議でいつも空気を読まないから呼ぶのをやめよう」みたいなことをするなと。

【ロバートソン】そうです。尖った人は尖ったままでOK。挑戦者の足を引っ張らない。そして転んだ人にはセーフティネットを用意する。そんなベンチャースピリットに溢れる社会に少しずつ変わっていけば、日本人が伝統的に持っている価値観も良い風に作用すると思います。