子どもがいる家庭も一品料理やパンで済ませる

外食や夜出かけることも多くない。そもそもヘルシンキ市などの大都市の中心地に住んでいれば別だが、家の近くにショッピングセンターなどの商業施設やスーパーがあることは少ない。コンビニやレストランもなく、外食は値段も高いため、特別な理由のある時にしかしない。

子どもがいる家庭は、送り迎えや家事に追われるが、日本ほどきっちりと料理を作ったり、お弁当を作ったりする習慣はない。一品料理や、パンなど、シンプルすぎると感じるほどの食事で済ませる人も多い。子どもの離乳食においては、自分で手作りすることは少なく、瓶詰の市販のもので済ませるのがほとんどだ。

職場でも、シンプルで心地いい服を洋服だって、2〜3日同じ服を着ていても何も言われないし、見た目よりは季節に対応し、機能性の高い服が好まれる。確かにマリメッコなど日本でも知られるブランドはあるが、おしゃれで可愛い、もしくは格好いいファッションの人はほんのひと握りだ。おしゃれ好きからすると、時にはそれは寂しくもあるのだが、シンプルでとにかく心地いいことは否定できない。

スーツやネクタイは着用しなくていい

たとえ仕事の場面でも、女性の化粧や、ヒール靴を求められることは少ない。特に冬になれば外はマイナス10度、20度になり、路面もツルツルだ。スカートやヒールで外に出ることは不可能だし、毎回着替えや履き替えの靴を持ってくるのもあまり現実的ではない。逆に、日本と同じく家では靴を脱ぐ習慣があるフィンランドでは、オフィスで心地いいサンダルや裸足で過ごしている人も見かけられる。

フィンランドのオフィス風景
写真=Jarmo Mela/Finland Promotion Board

化粧にしても、服装にしても周りからのプレッシャーはなく、清潔感があれば、あとは本人が心地よく、自分が好きなようにして構わない。髪形やネイル、アクセサリーも自由だ。男性もそれは同じで、スーツやネクタイは必ずしも必要ではない。

以前、日本に出張でやってきたフィンランド人が、日本のお客様の前ではスーツを着る必要があると知り、「スーツを着るのなんて結婚式以来かも。クローゼットの奥から引っ張り出してきたよ」と恥ずかしそうに着ていたのは忘れられない。

もちろんホテルや航空会社、医療系などは制服や身だしなみが問われるが、ビジネスファッションのルールは、日本よりもはるかにゆるい。教師、公務員、営業職であっても、ジーンズをはじめカジュアルな服装も、髪の色も、刺青の有無も気にされることはなく、それぞれの個性として受け止められている。