「日中通貨スワップ協定」に不快感を示した米高官

香港人は、孫文の辛亥革命を命懸けで支援した「宮崎滔天、山田良政・純三郎兄弟」の現代版の再来を期待している。3人の中でも特に山田良政は、1900年の辛亥革命惠州蜂起で香港から広州に入り、“革命烈士”として戦死している。だが、今の日本はそれとは対照的だ。香港人の眼には、日本はあまりにも薄情に映っていることであろう。

「今日の香港、明日の台湾、明後日の日本」といわれ、脅威が次第に日本にも迫ってきていることに気づいていないのか、知らないふりをしているのか、故意に知らせないのか。疑問符がいくつもついてまわる。

さらに日本は日米安保を堅持し親米を演じながら、外交においてあやふやな態度を取りがちだ。中国の一帯一路政策に反対したり、賛成したり、対応がぶれる。米中貿易交渉が始まり、中国が窮地に追いやられた2018年10月、突如日本は中国と3.4兆円もの「日中通貨スワップ協定」を締結したりもした。

筆者はとある専門筋から、米国高官が「朝鮮半島問題があるため、すぐには日本のこの政策決定に文句はつけないが、落ち着いたらきっちり落とし前をつけてもらう」と発言したと聞いている。その「落とし前」が、昨年11月に報じられた在日米軍への「思いやり予算」の大増額要求(現状の4.5倍に当たる80億ドル、約8640億円)なら、合点がいく。

習近平の「国賓待遇」が発する間違ったメッセージ

オランダのライデン大学地域研究センターで博士課程まで進み、世界の地域政治のシステムに精通する陳氏は、「習近平氏を国賓として招くことは、多くの国家へ間違ったメッセージを送ることになる」と警鐘を鳴らす。

「世界第3位の経済大国である日本が、新冷戦で米中どちらを選ぶのかを世界は注目している。特に親中的・媚中的なヨーロッパの政治家は、日本がアメリカと中国のどちらを選ぶかを静かにウオッチしている。日本はそれだけ影響力のある国であることを自覚してほしい」
「日本の挙動が、世界を揺らしているのです。習近平氏の国賓来日は、日中2国間だけの問題ではないのです。すでに、世界はアメリカか中国かを選ばなければならないぎりぎりの時点まで来ている。経済大国・日本の躊躇ちゅうちょは、世界の不安定要因になりかねない」