最安価の鶏肉より割高な豚肉を好む傾向がある

図表1では、食料に困ったことのある困窮者(この1年間に食料に困ることが「よく+ときどき」あった者)が平均と比べてどんな食品を多く、あるいは少なく摂取しているかを総括的に示している。

図を見ると、困窮者は大きな食品群別には、米や小麦などの比較的安価で手に入る穀物製品を多く食べる一方、肉、魚、果物と値段の張る食品ほど食べる量が少なくなっている。やはりおなかを満たす点に重点が置かれていると推測できる。

穀類の中では、米もうどん・中華そば、パスタといった小麦製品もよく食べられているが、パンやそばはそれほど食べられていない。やはり少し割高だからであろう。

魚介類の中では、高級魚のたい、まぐろ、えび、かにはあまり食べられておらず、あじ・いわしなどの大衆魚や水産缶詰の消費が多くなっている。

肉類の中では、牛肉の消費は少なくなっている。やはり、値段の高い食品には手が届きにくくなっていると思われる。ただし、豚と鶏を比較すると鶏のほうが安価であるのに、むしろ、豚の消費のほうが多くなっている。

「安い鶏より料理がしやすく合理的だ」

これは、一見、不思議な現象である。

私は、生活に忙しい困窮者は健康に良いといわれている鶏肉より、おいしい豚肉につい手が伸びるからではなかろうかと考えていたが、前回の記事に寄せられた読者コメントの中に、「鶏より豚のほうがおいしく食べるための料理がしやすく、忙しい生活の中では安い鶏よりかえって合理的だ」といった意見があり、なるほどそうかもしれないと思った次第である。

次に、こうした生活状態に応じた「肉の選択」と「地域的な肉の好み」とがどういう関係にあるのかを探っていこう。