エコーチェンバーに陥る人は限られている?

この9.4%という比率は接する人の総数にも依存するので、それを変化させて描いたのが図表3である。グラフを見ると4人以上の時の9.4%から、接する人が5人以上、6人以上と増えるにつれて、比率が下がっている。比率が下がるのは、接する人が2~3人程度と少ない時は、すべてがリベラルあるいは保守論客になりやすいためで、これは総数が少ないことによる効果なのであまり意味はない。ここで挙げた27人は調査のためのサンプルであり、実際には保守側・リベラル側ともにもっと多数の無名論客がいるはずである。

接する人の9割が保守・リベラルどちらかに偏る人の割合(接する論客の総数別)
出典:田中辰雄・浜屋敏『ネットは社会を分断しない』(角川新書)

人々が平均してどれくらいの論客に接しているかについての情報はないので、この曲線上のどこをもって全体の平均値とすべきかはわからない。しかし、図表の曲線の下がり具合から考えて、保守論客あるいはリベラル論客のどちらかに9割以上偏って接している人は5%以下と見積もっても良いのではないかと思われる。

ここで観察された事実は、選択的接触をめぐる一般的な認識と、だいぶ様相が異なることに注意されたい。人々はサイバーカスケードに分かれて自分と同じ意見の人ばかりに接し、エコーチェンバーが起こるというのが、「ネットが社会を分断している」論の基本的な論拠だった。しかし、この図表を見ると、そのような人は例外的である。

接する相手の9割以上が一方的な意見になってしまう人は、全体の5%以下しかいない。どれくらい偏ればエコーチェンバーが起こるかは知られていないため、確かなことはわからないが、この結果から見るとエコーチェンバーに陥る人は限られているように思える。

(*1)Shanto Iyengar Kyu S Hahn, 2009, “Red Media, Blue Media: Evidence of Ideological Selectivity in Media Use”, Journal of Communication, vol.59, Issue 1, pp.19-39, Figure 1

(*2)稲増 一憲, 三浦 麻子, 2016,「『自由』なメディアの陥穽 有権者の選好に基づくもうひとつの選択的接触」『社会心理学研究』31巻3号,pp172-183

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