アリババは、しばしばアマゾンの中国版と評されてきた。しかしアリババ前最高戦略責任者のミン・ゾン氏は「両社の成長戦略はまったく異なる。アリババは、アマゾンと違って新興市場でも競争力があるビジネスモデルを持つ」という——。

※本稿は、ミン・ゾン『アリババ 世界最強のスマートビジネス』(文藝春秋)の日本語版スペシャル・エディション「著者ミン・ゾン氏との一問一答」の一部を再編集したものです。

写真=Imaginechina/時事通信フォト
2019年9月10日、中国・浙江省杭州市の本社で行われたアリババ創業20周年の記念日に登場した、会長の馬雲(ジャック・マー)氏

中国の進化速度はアメリカの3倍以上

——本書はアリババを中心とする中国のインターネット企業群の知られざる実力を明らかにしている。

ミン・ゾン『アリババ 世界最強のスマートビジネス』(文藝春秋)

【ミン・ゾン】中国経済はあらゆる面において、先進国の後塵を拝していた。ただその分、足かせとなるようなレガシー(負の遺産)がなく、最先端のテクノロジーを採用して一気に世界最先端の小売業のモデルを構築することができた。アメリカの小売業が現代の形態になるまでにはおよそ100年かかったが、同じ進化が中国では30年で起きた。

これほど速く進化できたのは、見本があったからだという見方もある。たしかに製造業の世界では、中国企業は先進国のそれをロールモデルとし、既存のパラダイムに従ってきた。しかしインターネット企業は違う。アリババやテンセントのカウンターパートはアメリカには存在しない。

なぜアリババやテンセントがこれほど短期間でこれほどの競争力を持ちえたのかが本書のテーマだ。そこには世界中の企業の参考になるユニークな教訓がある。かつては誰もがアメリカのインターネット企業をモデルとしていたが、いまでは中国にも独自のモデルがある。アリババは間違いなくその一つだ。