個人事業主にも給与所得控除と同水準の控除を

政府はこの不平等を解消するため、平成30年度税制改革で給与所得控除を10万円減らし、その代わり納税者全員に適用される「基礎控除」を10万円増やすという税制改革を行った(平成32年分から適用される)。

個人事業主は基礎控除が増えただけ減税になる。今後の税制改正について、与党税制改正大綱には、「給与所得控除を削減し、その分を基礎控除に付け替える改革は、今後も継続する」旨の記述があるので、今後も継続的に行われていくものと予想される。

しかし、それには相当時間がかかるとも考えられるので、別の方法も検討すべきだ。それは、クラウドワーカーやウーバーイーツの配達員など主として労務の提供を行う者で、一定水準以下の所得の個人事業者に対して、給与所得控除と同じくらいの額の経費を一律して控除する制度である。そうすれば、双方の税負担は原則同一になる。その場合、いまだ過大となっている給与所得控除のさらなる見直し(縮小)とセットで行うことが重要だ。

個人事業主の確定申告を簡素にするべきだ

第二の課題は、個人事業主の税務申告の手間の問題だ。副業・兼業で所得を得ると、確定申告をしなければならないが、手続きには煩雑で手間がかかるため可能な限り簡素にする必要がある。具体的には、ITを活用した所得の正確な把握を基に、簡素な申告制度を構築することである。

その場合、労務を提供する者(納税者)が、資金・情報の接点ともいうべきプラットフォーマー(ウーバーイーツならUber Japan社)から自らの収入などの情報入手を簡素にすることがポイントになる。

筆者は、マイナンバーカードを使って開くマイナポータルに収入情報などを集約させ、イータックスと連動させて簡単に申告する制度を提言してきた。具体案は、東京財団政策研究所のホームぺージから、「働き方改革と税・社会保障」を参照してほしい。

働き方改革は、長時間残業や人手不足の解消だけでなく、余裕時間を活用した子育て・ワークライフバランスの改善、自己学習機会の向上などあらゆる分野に好影響を及ぼし、国経済社会のクリエーティビティー(創造力)の向上にもつながる。税制も社会保障制度も、それを支える形に変えていくことが必要だ。逆に言えば、改革が伴わなければ、働き方改革は、絵に描いた餅になりかねない。

【関連記事】
働き方改革は適用外「課長だけぶっ壊れる」問題
欧米で老後2000万不足が起こらない理由
この15年で130万人の営業マンが消滅したワケ
"月収20万"でも東京で豪遊する中国若者の正体
入社初日3時間で会社辞めた新卒の言い草