添加量を10分の1に減らして量産することができる

ジスプロシウムは、高温でもネオジム磁石の性能が落ちないように添加する調味料のようなものだ。少し混ぜるだけで材料が持つ本来の性質を一変させることができ、磁石の製造に欠かせないレアアースなのだが、埋蔵量が少なく、常に供給ストップの不安にさいなまれてきた。これを回避する磁石をいかに開発するかがインターメタリックスの最大の使命になったわけだが、佐川は同じレアアースでもネオジムとジスプロシウムとの根本的な違いを、力を込めて説明した。

佐川眞人●インターメタリックス代表取締役。68年神戸大学工学部電気工学科修士課程修了。東北大学大学院金属材料工学博士課程修了後、富士通に入社。住友特殊金属(現日立金属)入社。88年インターメタリックスを創設し、現職。ネオジム磁石の発明者として世界的に有名。

「ジスプロシウムは中国でもわずかに1ヵ所、広州周辺でしか採れないので、半永久的に供給不足の不安から逃れることができません。それに対し、ネオジムは世界中で2000万トンの埋蔵量が確認されており、それも米、中、ロ、豪など世界各地に分散していて、中国はそのうち3分の1を占める程度です。つまり、ジスプロシウムの問題さえ解決すれば、ネオジムはあと500年ぐらい持ちます。だから、ネオジム磁石の将来はまったくといっていいほど心配ないのです」

だからこそ、ジスプロシウムを回避する製造方法の開発に取り組んできたのであり、少しずつ研究成果が表れてきている。それは、「プレスレスプロセス」と「粒界拡散法」と名づけた新たな製法で、12年末の量産化に向けて最後の追い込みに入っている。

「これら2つの製法が軌道に乗れば、将来はジスプロシウムの添加量を10分の1に減らして量産することができる」と、佐川は期待を込めて語った。

韓国勢などにシェアを喰われる恐れはないか

電流を交流から直流に変えたり、電圧を上げ下げしたり、電気の流れをきめ細かく制御する「パワー半導体」。電力を効率よく使えるため“省エネ半導体”とも呼ばれ、今夏に予想される電力不足を見越して需要が一段と高まっている。

パワー半導体デバイスの市場規模(出典:富士経済)※トランジスタ、パワーモジュール、ダイオード、サイリスタ、次世代パワー半導体デバイスを含む。2010年は見込み、2011年以降は予測ベース

エアコンの省エネ効果で知られる「インバーター」は、パワー半導体を組み込んだ部品を指すが、日本はこの分野で世界のトップを走る。日本メーカーの中では三菱電機の世界シェアが高いうえに、とりわけ中国市場の伸びが著しく、山西健一郎社長はこんな現状を披露した。

「日本製エアコンのインバーター化率は100%ですが、中国も環境問題への配慮からエアコンへの搭載を急いでいます。エアコン最大手・格力のインバーターはほぼわが社の独占状態ですし、美的も半分以上はうちの製品を使っています。そのほか、ハイアール、ハイセンスにも納入していますから、中国製エアコンの7割以上に使われている勘定です」

つまり、これは中国において三菱のインバーターがざっと1000万台を超えるエアコンに使われている計算になる。

DRAMメモリーにしろ、液晶テレビにしろ、日本が強いといわれた製品が韓国や台湾企業などの追い上げで、急速にシェアを落としてきた例は枚挙にいとまがない。インバーターを構成する基幹部品のパワー半導体も、現状では日本の強さが光るが、韓国勢などにシェアを喰われる恐れはないか、山西に質してみた。

「韓国もLS産電というところが、ドイツの半導体メーカー・インフィニオンと組んで開発しているはずですが、製品は出てきません。競合するのはフェアチャイルドぐらいで、パワー半導体のモノづくりは極めてアナログ的ですし、とくに品質と価格のバランスをどう取るかに難しさがあって、なかなか追いかけてこられないのだと思います」