元閣僚や現職議員などが監理団体を統括

実習生の受け入れは、問題が起きれば入管当局とのやりとりが生じる。また、送り出し国側との交渉においても、「元国会議員」といった肩書が威力を発揮する。

実習生が急増しているあるアジアの国からの受け入れでは、つい最近まで監理団体を統括し、収入を得ている組織もあった。監理団体はこの組織にカネを払わなければ、実習生の仲介ができなかったのだ。

この組織のトップは閣僚経験もある元国会議員で、理事には与野党の現職議員から関係省庁の事務次官経験者、元大使まで名を連ねている。関係者の間では知られた組織だが、錚々そうそうたる理事たちの顔ぶれを前に、監理団体は従うしかなかった。

『週刊文春』2019年9月12号には、上野氏と問題の案件を仲介した女性経営者のこんなやりとりが載っている。

上野氏「(就労ビザの=筆者注)許可も極力速やかに出すようにするので、そこで二万ずつ手数料をもらうだけでも、まあ月に百万でも入れば」
経営者「そう。私ももうちょっと値上げとか取れる所があると思ったんで(後略)」
上野氏「三とか五(万円)にするとか」

人材派遣会社が外国人の就労ビザを取得できれば、彼らを取引先の企業に派遣して定期的な収入が見込める。その一部を上野氏らはハネようと考えたのだろう。しかし、口利きは完全な違法行為である。

そんなことをせず、上野氏も実習生の受け入れに裏で関与していれば、合法的に利権を手にできたかもしれない。だが、知り合いの経営者から持ち込まれた案件に飛びつき、結果として政務官の地位を失うことになった。

人材派遣会社がビザ申請をしていた謎

さて、今回の案件では、人材派遣会社が外国人のビザ申請をしていた。一般の企業ではなく、なぜ人材派遣会社だったのか。

外国人労働者の増加は、人材派遣業界にとって大きなビジネスチャンスとなっている。今年4月から始まった新在留資格「特定技能」による受け入れ制度では、人材派遣会社は「登録支援機関」として、実習制度の監理団体に似た役割を果たせる。

「特定技能」は実習制度と同様、人手不足の職種に外国人労働者を供給するためにつくられた。介護や建設、外食、農業などの14業種において、当初の5年間で34万5000人の受け入れが見込まれる。人材派遣業界が色めき立つのも当然だ。

そして、すでに同業界の参入が目立つのが、ホワイトカラーの仕事に就く外国人の就職斡旋あっせんである。ホワイトカラーの外国人が日本で就労ビザを得る場合、経営者や医師、大学教授などを除き、多くは「技術・人文知識・国際業務」という在留資格(通称・技人国ビザ)を得る。技人国ビザは原則、日本で専門学校か大学を卒業、もしくは海外の大卒以上の学歴がある外国人に限って発給される。

今回、上野氏が関わった案件に登場する人材派遣会社の場合、海外の人材をリクルートしていたのだと思われる。就労や留学で新たに入国する外国人のビザ取得に必要な「在留資格認定証明書」を申請していたからだ。一方、人材派遣業界が海外人材にも増して注目しているのが留学生である。