“表現の自由”を問う企画展が中止に追い込まれた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(愛知県、開催中)。いったい何が問題だったのか。同志社大学の河島伸子教授は「『公金を使うな』との批判に応えるためには、展示の社会的意義を説得力をもって説明することが求められる」という——。
中止となった「表現の不自由展・その後」で展示されていた「平和の少女像」
写真=時事通信フォト
中止となった「表現の不自由展・その後」で展示されていた「平和の少女像」

“タブー視”されていた作品がまたも炎上

愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に含まれる企画展「表現の不自由展・その後」が、これに対する一般からの抗議と脅迫を伴う電話が殺到したことを受け、8月1日の開幕からわずか3日で中止となった。

もともとこの企画展は、2015年に「慰安婦」問題、天皇と戦争、政権批判など、公共の美術館等ではタブーと見なされがちなテーマを題材としているために展示が控えられていた美術作品を集めた「表現の不自由展」に、その後の事例作品も加え、改めて日本における言論と表現の自由がどの程度保障されているかを問う企画として同芸術祭に加えられていた。

中止の大きな理由は、電話やFAXで抗議する声があまりに激しく、観客の安全、地域商店街なども利用した会場全体の安全を確保できないというものであったが、この決定をめぐり、関係するアーティストたちから反対の声が上がり、一方で、そもそもこのような企画展があったこと、あるいはその中止を決定したことなどに対して一部の政治家が批判の声を上げ、このやり取り自体も一層論争に火を付けた。