高齢化によって増加した疾患は?

年を重ねると「眼が見えにくくなった」「疲れやすくなった」と感じる機会は増えていく。一体、どのような疾患に悩まされるのだろうか。

日本における視覚障害の原因疾患の1位は、緑内障だ。フジモト眼科理事長兼院長・藤本雅彦氏は、「近年、緑内障が早期に見つかる傾向があります」と説明する。

「これは人間ドックが発達し、さらに『40歳以上で20人に1人が緑内障』という啓蒙活動が進んだ結果かと思われます。一方、発展途上国における失明原因の1位は白内障。手術する医療体制がまだ整っていないためです」

それに対して日本は、白内障手術は一定の質が担保されており、多くの病院やクリニックで日帰り手術が行える。そのため、視覚障害の主要な原因にはなっていない。

「2位の網膜色素変性症は治療法が確立されていません。それに次ぐ糖尿病網膜症は、早期に治療介入ができるため、以前よりも重症の患者さんは減っている印象。逆に黄斑変性は、高齢化とともに増えている印象があります」(藤本氏)

藤本氏によれば、中高年に顕著な疾患は、緑内障、白内障、糖尿病網膜症、黄斑変性に結膜炎を加えた5つ。

眼科で法外な治療費を請求されない理由

患者であれば気になる治療費。歯科などでは「高額な治療費がかかった」という話を耳にすることがある。眼科で同じような話を聞かないのは、なぜだろうか。

「眼科はほぼ保険診療で行われるため、診察料金はどこの病院でも基本的には同じだからです。自由診療は非常に限られていて、今のところ使われているのは白内障の手術で使用する眼内レンズくらいでしょうか。目のピントの合う距離が1つの『単焦点眼内レンズ』は保険が適用されますが、目のピントの合う距離が複数ある『多焦点眼内レンズ』は自由診療。両目で約80万円なので差益は大きい。とはいえ、だからといって無理やり勧める眼科医は少ないでしょう」(同)

視力矯正手術の一種であるレーシックも自由診療だ。しかし、角膜感染症問題が起きて以降、リスクを怖れてレーシックを受ける者はかなり少なくなった。また、コンタクトレンズの検査は保険診療。ただし、クリニックの施設基準や患者の割合によって保険点数が異なるため、どこに行っても同じ料金になるとは限らない。

一般的に自由診療がほとんどない眼科医。そのため、儲けはコストをどれだけ抑えるかで変わってくる。