「愛があれば貧乏でもいい」恋愛至上主義の消滅

いまは若い男性の経済格差が広がってしまったので、女性はその収入をより強く気にせざるを得なくなっています。アンケートの回答にしろ婚活ブームにしろ、それが社会に表面化しているというのが現状です。

それにしても『結婚の社会学』を書いてから約20年の間に、こうした「本音」をオープンにしていいか・悪いかという判断基準が大きく変わったと思います。20年前は、自治体の報告書や新聞に本音を書こうとすると「待った」がかかりました。「お金なんて関係ない、結婚は愛ですべきだ」というようなイデオロギーが残っていたのです。

いいか悪いかはともかくとして、いまはそうしたイデオロギーに反する現実でも発表できるようになりました。社会的にも語られるようになったし、政府の機関もそれを表明しています。逆に言えば、結婚に関する本音がオープンに語られるようになったということは、「愛があれば貧乏でもかまわない」という恋愛至上主義が事実上なくなってしまったといえるのかもしれません。二十数年こういう調査を続けていると、社会の反応が如実に変わってきたのを痛感せざるを得ません。

お金持ちを狙う女性ほど「年収は関係ない」と言う

本音ということで言えば、こんな面白い現象もあります。

婚活では、お金持ちを狙う女性ほどそういう本音は言わないし、言おうとしない。「結婚に年収は関係ない」と言いたがる傾向があります。拙著『「婚活」時代』の共著者であるジャーナリストの白河桃子さんが「セレブ主婦」のインタビューをしていたときに、ほとんどの人が「相手が大金持ちだから結婚したんじゃない」と話したそうです(白河桃子『セレブ妻になれる人、なれない人』)。

「好きになった人がたまたまそうだった」もしくは「結婚したときはお金持ちじゃなかった」といった回答です。つまり、「結婚するときは別に気にしなかったけれども、結果的に事業で彼が成功して、どんどん収入が上がっていって、たまたまセレブの地位にいるけれども」というふうに説明するのです。要するに「結婚に年収は関係ない」と言いたいのでしょうが、私に言わせれば、それは本音ではなく、建て前が残っているだけなのです。

高収入を狙う人たちとは別に、安定した収入がないと生活できないと本気で思っている人たちもいます。つまり、「年収1000万円と言っているのではない。普通でいいから600万円」というような人たちです。