セブン&アイやヤフーなどトップ企業でもトラブル続出

世界全体でキャッシュレス化の動きが急速に進んでいる。国内外の中央銀行も法定通貨のデジタル化(デジタル・カレンシー)の研究に注力している。

わが国はキャッシュ(現金)を使う人が多い。スマートフォンを用いた決済サービスも増えているが、依然として一般的にはなっていない。しかも最近はトラブルが相次いでいる。セブン&アイグループのモバイル決済アプリ「セブンペイ」では不正アクセスが起きてしまった。また、ヤフーの個人信用格付けサービスでは、個人情報を第三者に提供していたことで批判を集めた。

セブンイレブンの「7Pay」の案内(東京都新宿区)。セブン&アイHDは、全国のセブンで7月1日に始まったバーコード決済サービス「7Pay」で、第三者による不正利用が発生し、約900人が計約5500万円の被害に遭った恐れがあると発表した。(写真=時事通信フォト)

今後も、世界全体でキャッシュレス化は拡大していくだろう。わが国もこの動きをキャッチアップしなければいけない。だが、だからといってシステムが中途半端なものではダメだ。利用者が安心して利用できるシステム構築が求められている。

わが国でモバイル決済の導入が遅れたわけ

世界的に見て、わが国はキャッシュレス化がかなり遅れている。そこには私たち日本人の生き方=文化の影響がありそうだ。日本人は現金が好きだ。それは偽札の存在を心配しなくていいからだろう。

お金=紙幣の印刷には高度な技術が要求される。印刷技術が高いほど偽札を作ることは難しくなる。これは現金を使う際の安心感に無視できない影響を与える。

たとえば米国では、100ドル札を使って食事などの料金を支払おうとすると、店員が不安そうな表情をし、お札を光に照らして偽札ではないかを確認しようとすることがある。それは、米国における偽札への不安が相対的に高いことを示している。

しかし、わが国では、そのような状況に遭遇することはまずない。国立印刷局によると、わが国での偽札の発生率を1とした場合、ユーロは216、米国は638だという。わが国の紙幣の信用度はかなり高いのである。それはキャッシュレス化の遅れの裏返しだ。

裏を返せば、米国や中国では現金の使用に対する不安がある。それが、モバイル決済をはじめとするキャッシュレス化の進展を支えている。