コンテンツ供給が止まった時に真価が問われる

映画スタジオ側が知らないことが一つあった。ネットフリックスのフォーカスグループ(グループインタビュー)によれば、視聴者はビンジウォッチングによって高揚感を得ている。何時間もぶっ続けでドラマを見ていると、ネットフリックスブランドにほれ込んでしまうのだ。

ジーナ・キーティング著、牧野洋訳『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』(新潮社)

ストリーミングはいつの間にか一般人が使う語彙の一つになり、消費者行動を根本的に変えた。サランドスはプレスリリースの中で「ストリームチート(だまし)」に触れて、次のような冗談を書いたことがある。

「パートナーをだまして先にテレビドラマを一気見してしまうとどうなるでしょう? 信頼関係が壊れたり、けんかになったり、離婚騒ぎになったりするかもしれません。でも、ネットフリックスは責任を負いかねます。どうかご自身で責任を持って視聴するように心掛けてください」

しかしながら、サランドスとヘイスティングスは少しずつ危機が近づいているということも察知していた。映画スタジオはいずれ「インターネットテレビ=テレビの必然的進化形」という現実に目を向けるようになる。そうなったらネットフリックスへの映画やテレビドラマの供給をストップし、自らストリーミングサービスを開始するはずなのだ。

ビュークスにも一理ある、とサランドスは思った。消費者がネットフリックスを利用するのは第一級のコンテンツを視聴できるからである。映画スタジオからのコンテンツ供給が止まったら、ネットフリックスは自ら第一級のコンテンツを作らなければならない。

こうしてネットフリックスの更なる快進撃が始まるのである。

ジーナ・キーティング
フリーランスの経済ジャーナリスト。米UPI通信に続き英ロイター通信に記者として在籍し、10年以上にわたってメディア業界、法曹界、政界を担当。独立後は娯楽誌バラエティ、富裕層向けライフスタイル誌ドゥジュール、米国南部向けライフスタイル誌サザンリビング、ビジネス誌フォーブスなどへ寄稿している。2012年、処女作『Netflixed』を刊行。
(写真=Sipa USA/時事通信フォト)
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