世界的に認知され、ついにはユネスコ無形文化遺産に登録された日本食。脳科学者の茂木健一郎氏は「いまや、昔のように『スシ、テンプラ、スキヤキ』の時代ではなくなった。外国人の好む日本食はどんどん進化している。その代表例が『ラーメン』だろう」と指摘する――。
ラーメンやカツカレー、お好み焼きなど、外国人が好む日本食は、かつてのの「鮨、天ぷら、すき焼き」といった常識からバージョン2.5くらいにまで進化している――。※写真はイメージです(写真=iStock.com/RichLegg)

ポーランドの古都で見つけたラーメン店

日本独自の文化の筆頭で、いま世界にもっとも認知されているものといえば、いうまでもなく日本食だろう。和食ブームは以前から起きていたが、2008年度の『ミシュランガイド 東京版』が東京のレストランに一番多くの星をつけたことは決定的だった。

2019年度版においても、三つ星獲得数、星の総合獲得数ともに東京が一位。ミシュランの評価を気にする外国人にとって、東京は世界一の美食天国として認識されているといって差し支えないだろう。

最近、ぼくが衝撃を受けたのが、日本式ラーメンの海外での爆発的ヒットである。先日、学会でポーランドのクラクフに滞在したときのこと。クラクフは、ポーランドでもっとも歴史ある都市の一つである。中世ヨーロッパの街並みが奇跡的に現在まで残り、世界遺産にも登録されている貴重な街だ。その美しい街を歩いていたところ、突如「ラーメン・ピープル」なる看板が姿を現した。興味が湧いてなかを覗いてみると、イマドキのポーランド人の若い女の子が一所懸命ラーメンをつくっていたのだ。

ニューヨークやロンドンに「一風堂」が進出するほど昨今のラーメン人気がすさまじいことは知っていたが、まさかポーランドの古都にまで、その人気が達しているとは思わなかった。ちなみに、メニューはベジタブル味噌ラーメンとチャーシュー醤油ラーメンの2択。ぼくはベジタブル味噌ラーメンを注文し、クラクフでラーメンを食べるという出来事に妙に感動しながら麺をすすったのである。店内にはなぜか、昭和のころの日本の歌謡曲がずっと流れていた。

進化する外国人の「日本食」観

和食が世界に認知され、ついにはユネスコ無形文化遺産に登録されて久しいが、特筆すべきはいまや、昔のように「スシ、テンプラ、スキヤキ」の時代ではなくなったということだろう。ぼくの周りにいる外国人の声に耳を傾けるなら、「カツカレー、ラーメン、オコノミヤキ」といったところだろうか。とにかく、外国人が好む日本食は、これまでの「常識」からバージョン2.5くらいにまで進化しているのだ。