未曽有の10連休となった5月のゴールデンウィーク(GW)がいよいよ始まる。どのように過ごすのが幸せなのか。哲学者の小川仁志氏は「ハイデガーが示したように、予め死を覚悟すること。そうすればGW10連休が充実したものになるだろう」という――。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/kazuma seki)

日本人は休むのが下手くそ

新天皇の即位のおかげで、未曽有のゴールデンウィーク10連休です。天皇なんて気にもしない小中学生たちも、さすがに今回は感謝しているのではないでしょうか。

ただ、大人の反応は微妙なようです。独身者や、子どもがまだ未就学児の大人は別として、普段子どもが学校に行っている場合、逆に家事などの負担が増えますから。

もちろん長期間旅行に出かけることができるなら話は別です。降ってわいたようなこの10連休に対する受け止め方も人それぞれ。今回はこの連休について哲学してみたいと思います。

まずそもそも休暇とは何か? それは何もしなくてもいい時間のことです。日ごろ仕事をせざるを得ない私たちは、何もしなくていい時間を求めます。キリスト教やユダヤ教には何もしてはいけない安息日という概念がありますが、それがそのまま今の週末になっています。イスラム教にも、必ずしも土日ではないですが安息日があります。

日本の場合は、仏教や神道の影響を強く受けていますが、これらの宗教には安息日のような考え方が基本的にはありません。だからでしょうか、日本人は休暇を取るのがとても下手なのです。

そもそもなぜ休暇はあるのか?

たとえば西洋の人たちは、一生懸命働きますが、その後うまく休暇を取ります。バカンスもそうですし、日曜は本当に働きません。ところが日本人は一生懸命働くにもかかわらず、長期休暇を取らないのです。夏休みはお盆の数日間だけとか、週末も休日出勤とかいうのはざらです。それではさすがに鬱になる人や、過労死者が出るのも不思議ではありません。人間は機械ではなく、生き物なのですから。

そこでようやく働き方改革が叫ばれるようになったわけですが、それでもまだメンタリティは変わっていないような気がします。現に私の周りにも、最近の風潮のせいで「残業ができなくて困る」とか、「有給の取得を義務付けられて困る」といった声が聞こえてきますから。まるで働き方改革が余計なお世話のようになってしまっているのです。

でも、私たちが考えなければならないのは、なぜ休暇があるかです。それは安息日を見てもわかるように、人間には限界があるからです。心も身体も。とするならば、定期的に休まないと、心身を病んでしまうことになりかねません。いくらやる気があってもです。