とはいえ、ブラジルやロシアなどの資源国では、資源価格の高騰で実質経済は好景気が続いているほか、中国では今年4~6月のGDP成長率が10%に達し、インドの年間成長率は7.7%と予測されるなど、高成長を維持している国も少なくない。

日本を含む先進国全体でも、2008年の実質GDP成長率は1%前後の見込みであるのに対し、新興国では7%前後が見込まれるなど、今や世界経済の成長を牽引しているのは新興国であり、今後もその傾向は変わらないと考えられる。

各国の株式市場の時価総額は、その国のGDPを反映するといわれており、日本のバブル期でも時価総額はGDPの1.5倍程度。GDP成長率が1%の先進国の株式ではリスクに見合ったリターンが期待しにくく、年間7%程度のリターンを求めるなら新興国は外せない投資対象であることは間違いない。

7月にWTO(世界貿易機関)の多角的通商交渉が決裂したのも、中国、インドが米国と対立したためであり、政治の場でも新興国が存在感を増している。新興国なくして世界は語れない、という時代が到来したといえるだろう。

新興国への投資で見落としがちなのが、経済成長に伴う株価上昇からのリターンに加え、通貨のリターン(為替差益)が得られる、という魅力だ。

たとえば、TOPIX(東証株価指数)は1968年1月、100を起点に算出が始まり、現在1240(8月25日時点)。12.4倍まで成長している。当時、米ドルは固定相場制で1ドル360円であり、現在は3倍以上の円高。米ドルで日本株市場に投資した外国人は「12.4×3」で、約37倍に資産を増やしたことになる。当時11000円を超えていた英ポンドで投資していれば、「12.4×5」で、約62倍だ。

経済の強い国の通貨は買われるので、新興国の通貨は長期的に「円安」の流れに乗ると考えるのが普通である。

短期的には下げの局面もあるのが株式市場の常。米国にブラックマンデーがあったように暴落も起きる。新興国も短期的には大きな下げもあるが、長期的に見れば投資対象として魅力があり、下げている今は「買い」ともとれるのだ。

(高橋晴美=構成)