「介護費用の軽減制度は、世帯全員が住民税非課税だと、さまざまな優遇が受けられます。が、現役世代と同居していると課税世帯となりがちです。そこで、実際は同居していても、住民票上の世帯を分けて、親の介護費用の負担を下げている人もいます。ただし、場合によっては、世帯分離しないで同居扶養控除などを受けたほうがお得になることもあるので、プラスマイナスをよく計算することです」(おちさん)

親の介護費用は、親のお金を使うのが原則

親の介護費用は子どもが出すべきか迷うところだが、黒田さんは「親の介護費用は、親のお金を使うのが原則」だという。子どもはお金より、ケアマネとの連絡役や事業者の選定、高額介護サービス費の請求など、介護環境の整備や情報収集に注力して、親がオトクに安心して介護が受けられるよう見守りたい。

親自身のお金で医療費や介護費を賄ってもらうためには、老後資金は少しでも増やしてあげたい。公的年金は支給開始年齢を遅らせると、もらえる年金額が繰り下げた月数×0.7%増額される(ただし、老齢厚生年金を繰り下げると、妻の加給年金は消滅する)。また、国民年金のみの自営業の人は、月400円ずつ付加保険料を納めると、納付月数×200円が将来もらえる年金額に上乗せされる。いずれもすでに受給している場合は利用できないが、これから年金をもらう親がいる場合は、利用を検討してみよう。

最後に考えておきたいのが、終末期医療の問題だ。希望に沿ったケアを受けるためにも、富家さんは「患者自身が終末期医療の方針を示す『事前指示書』をつくっておくといい」という。

「胃ろうなどの経管栄養を利用するか、人工呼吸器をつけるか、蘇生術を受けるかなど、自分の意思を明確にしておくことが大切です」

厚生労働省も、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を改定。2018年4月の診療報酬改定では、患者から事前指示書を取得した医療機関に対して医療費を加算し、普及を進めている。

治療方針は、お金がかかるかどうかで決めることではないし、人の気持ちは変わるものだ。指示書を書いたときと実際に医療を受けるときとでは、医療に望むものが変わることもある。1度書いたら、その通りにしなければいけないものではないが、親が望む形で最期を迎えるために、事前指示書を書いておいてもらうのも1つの手段だ。

おちとよこ
医療福祉ジャーナリスト
高齢者問題研究家。高齢者介護、医療、福祉などをテーマに活躍。著書に『一人でもだいじょうぶ 仕事を辞めずに介護する』(日本評論社)など。
 

富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト
東京慈恵会医科大卒。開業医、病院経営、日本女子体育大学助教授を経て、医療コンサルタントに。新日本プロレス・ドクター。著書に『ブラック病院』など65冊以上。
 

黒田尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー
CFP1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年に独立系FPに転身。著書に『親の介護は9割逃げよ』『入院・介護「はじめて」ガイド』など多数。