仕入れ→販売までを統括、S級品で勝負

二つ目の見どころは、原材料の調達から販売までの流れを、既存の仕組みに乗るのではなく、独自に組み立てたことです。そこでは、前職でのブランドマネジャーの経験が、フルに活かされています。

地元の問題解決に繋がるビジネス●地元産の梨やワインの赤ブドウの“廃棄物”を買い取り、障がい者“マイスター”が乾燥させフレーバーに。地元の問題解決に繋がっている。

どんな商売を始めるかを決める際、5000ものキーワードから「紅茶」を選び出したという手法も稀有ですが、その後の原材料の調達法、商品開発や販売法も実にユニークです。

たとえば、紅茶の調達では、インド人が経営するカレー店に飛び込みで行き「インドの紅茶事情を教えてほしい」と頼み込み、さらにはインドへ行き、紅茶事情を自分の目で見てくることから始めています。

小売り・卸売業、製造業も発達した日本では、出店準備も便利になっており、必要な原材料は業者に依頼すれば、ほとんどのものがそろいます。にもかかわらず、根本社長はそれに頼らず、自らの手で茶葉の選定と調達を行っているのです。

そのために必要な紅茶の知識と技術についても、取得に2年以上かかるシニアティーコーディネーターの認証を、わずか1カ月半で取得したそうです。これも、マイスターを雇い、自分は店主に納まるという方法もあるのに、それをしませんでした。

なぜなら、ワイズティーオリジナルの紅茶を、宇都宮オリジナルにするという熱意が根本社長にあったからです。誰にでも扱えて、横並びになりがちなB級品ではだめ。A級品をも飛び越え、S級品で勝負することが彼には重要だったのです。

宇都宮は戦前・戦後を通じ、商工業で発展してきた街です。「他の中核都市に比べて、今も所得水準が高いので、オリジナルブレンドで良質の紅茶を扱えば、街の人は利用してくれるだろうし、外からも人を呼べる」と見込んだのだといいます。

出店に至るまでの彼の行動は一見、破天荒です。が、社会の動きを捉える眼、市場を的確に読む能力、商品開発やブランディングのノウハウなど、前職で培われた力が存分に発揮されていることが感じ取れます。