各省庁のキャリア官僚の採用は、総合職試験の合格者を対象とする官庁訪問により決定される。

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「近年、採用する側は多様な人材を求めています。そのためペーパーテスト重視から面接重視への大転換が図られました。かつてなら、ペーパーテストでトップ10に入れば、人気の高い省庁へ進むことができたのに、いまや試験でトップ10に入っていても、面接の出来が悪ければどの省庁にも採用されない可能性があります。その背景には、人物重視があり、昨今のキャリア官僚の不祥事を受けたものともいえます」

久保田教授はこう続ける。

「ペーパーテスト合格は面接試験に進むためのパスポートにすぎません。重視すべきは面接です。そのポイントは民間企業の場合とそれほど変わりません。頭の回転が速い人や政策のアイデアを多く持つ人が採用されると思われがちですが、実際は一緒に仕事をしていけそうか、協調性や積極性をしっかり持っているかなどをよく見ているのです」

ところで、総合職試験出身大学別合格者ランキングの表を見ると、1位は東大だが5年前より合格者は激減。一方で合格者を増やしているのは、国立では神戸大、岡山大、千葉大、私立では中央大、明治大、立命館大などの中堅大学であることがわかる。これらの大学は、資格試験合格に定評がある予備校と提携して公務員講座を開設し、学生の受験をサポートするなどの効果があって、合格実績を伸ばしている。

「立命館大では公務員講座の提供の他、現役官僚のOB・OGなどに協力してもらい、学生に対し面接対策などの支援をしています」

入省後の出世レースにおいても、東大有利の構図は崩れつつあるという。

「昔は特に東大出身者が圧倒的に多いので、結果的に課長以上の役職に東大出身者が多いのは当然でしたが、学歴重視の風潮は薄まりつつあるといっていいでしょう。将来的には私大出身の事務次官が続々と出てくる可能性はあります。学生側は東大でなければ駄目だと思い込んでいることが多いのですが、実は東大以外の学生にとって、キャリア官僚として活躍するチャンスは広がっているといえます」

ただ、苦労してキャリア官僚になっても、近年は転職者も増えている。

「当然公務員として定年まで勤め上げる人は多いですが、前述したように世間の風当たりや激務薄給などによってキャリア官僚から転職をする人は年々増えています。しかし、20代から国を動かす政策立案ができるという意味で、キャリア官僚は最初の職業として魅力があるといえます。国家プロジェクトを担うキャリア官僚が、東大以外に対しても広く門戸を開いているのは時代の流れなのでしょう」

久保田 崇
立命館大学大学院公務研究科教授
1976年、静岡県生まれ。京都大学卒業後、内閣府入府。2011年から15年まで陸前高田市副市長。16年より現職。