「私たちの評価は9割が外見」「同じ失敗をしても“顔面偏差値”が高い人ほど許される」「結局、美人には勝てないのですか?」。そんな働く女性たちからの切実な問いに対し、ジャーナリストの池上彰氏が答える。単行本『TBSテレビ「池上彰と“女子会”」 池上彰が「結婚」「お金」「仕事」についての疑問に答えます!』(KADOKAWA)より、その回答を紹介しよう――。

「容姿採用」がまかり通っていた時代

池上彰氏(写真提供=KADOKAWA/TBS)

アメリカの大学教授ダニエル・S・ハマーメッシュ氏は、著書『美貌格差-生まれつき不平等の経済学』(東洋経済新報社)において「美人はそうでもない人よりも生涯約3000万円得をする」という調査結果を発表しています。

お隣の韓国は、外見による所得格差が非常に顕著な国のうちのひとつです。“整形大国”とも呼ばれ、美容整形手術の経験がある女性は4割以上もいるそうです。しかも、術後の事例写真を見ると、どれもよく似た印象を受けます。

韓国女性はなぜ、整形手術をしてまで同じような顔にするのでしょうか。その理由で最も多いのは、採用試験のためだそうです。韓国の就職ポータルサイトの調査によると、「容姿が面接試験の結果に影響する」と答えた企業の人事採用者が、なんと84%もいました。韓国政府もこの風潮を問題視し、企業側に能力重視の面接試験を導入させる措置を取っていますが、なかなかうまくいかないのが現状のようです。

容姿重視の採用だと、美人というだけで待遇のいい企業に入社できますから、必然的に金銭面で得をすることになります。実は、日本でも容姿重視の採用が堂々と行われていた時代がありました。例えば、1960年代の新聞の求人広告には、「美人ウエートレス募集」といった見出しが躍っています。採用条件も「身長157cm位、20歳前後、スマートな美しい方」と、ほぼ容姿の項目ばかりです。