文在寅大統領はこれまで、統制権の返還を主張しても、在韓米軍の撤退を主張したことは表向きありません。国内の保守派の顔色をうかがっているのです。しかし、「返還」は必然的に「撤退」につながるため、「返還」の主張は「撤退」の主張と同義です。

米朝首脳会談後、文在寅政権の支持率は高まり、6月13日の韓国の統一地方選では与党「共に民主党」が圧勝しました。強固な支持を背景に、文在寅大統領は本音をぶつけてくるでしょう。そもそも、文在寅大統領は筋金入りの反米主義者です。アメリカの支援を「恥」とする考え方に立つ彼が、今後何を言い出すかは未知数です。

トランプ大統領も乗り気?

一方、トランプ大統領は大統領選の際、在韓米軍の撤退(在日米軍も)を公約に掲げており、これについて首尾一貫した主張を展開しています。さらに、米韓合同軍事演習を「米朝の対話が続く限り、中止する」とも述べています。これらの発言は、東アジアの安全保障の要である在韓米軍のプレゼンスを揺るがすもので、日本としては早急にその真意をただす必要があります。

今こそ、日本は日米関係を緊密に保ちつつ、自主防衛力の幅を拡げる選択肢や可能性について、真剣に考えなければならない時に来ていると思います。

(*注1)"North Korea has increased nuclear production at secret sites, say U.S. officials" by Courtney Kube, Ken Dilanian and Carol E. Lee / Jun.30.2018 / 7:13 AM ET
(*注2)2017年の10月28日、ジェームズ・マティス米国防部長官と宋永武(ソン・ヨンム)韓国国防部長官が第49回韓米定例安保協議(SCM)で『戦時作戦統制権の移管計画の補完・発展のため、1年で報告書をまとめることで合意。

宇山卓栄(うやま・たくえい)
著作家。1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。おもな著書に、『世界一おもしろい世界史の授業』(KADOKAWA)、『経済を読み解くための宗教史』(KADOKAWA)、『世界史は99%、経済でつくられる』(育鵬社)、『「民族」で読み解く世界史』(日本実業出版社)などがある。