なぜ、人は一度信用した人に疑いの目を向けないのか

わずか30分かそこらで第一印象がコロリとひっくり返る体験を何度も重ねるうちに、わかってきたことがある。まず、自分の直感がアテにならないことだ。同じ現象がこんなに起きれば認めざるを得ない。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/kbeis)

もうひとつ気づいたことは、筆者が普段、第一印象にこだわりがちだったということである。自分の判断を信じたい気持ちが強いタイプで、いったん“信用できる”と思ったら容易にその人物に対する評価を変えようとしない。でも、その根拠はなにかといえば服装などの見た目であり、表情やしぐさ、声といった要素がほとんど。詐欺師から見たらカモにしやすいタイプの典型かもしれない。

実際は、人を見る目など大して備わっていないし、自分の判断力を信じることで自己満足したいだけだ。そのため、「あれ、この人……?」と心のどこかで違和感を抱く場面があっても、いったん信用したのだからと、頭に浮かんだ疑問符を打ち消そうとする。相手を信用する“誠実”な行為に見えるが、自分の判断を否定したくないだけなのだ。

▼第一印象を時の経過とともに修正をすべし

服装は清潔感第一、小物にも気を使おう、あいさつは笑顔が大事、しゃべるときはハキハキと、ナチュラルメイクでさり気なくアピール――。

世の中が第一印象をよくするための提言であふれているのは、それが人間関係を良好にすることになるからだろう。でも、意地悪な見方をすれば、これらの提言はすべて、相手の心の鍵をこじあけるための知恵である。いったん信用を勝ち取ることができたら、自己の直感力にこだわる人ほど好印象を持ち続けてくれるのだ。よって、第一印象をよくするための自己演出はなくならないし、それは多くの読者が実践していることだろう。

人が己をよりよく見せる外見の演出に惑わされず、相手の本質を見抜け。

しばしば聞くフレーズだが、言うはやすし、である。ただ、本質までは見抜けなくても、随時、第一印象をより現実的なものに修正することなら可能なはずだ。

筆者が、裁判傍聴であっさり被告人に対する印象を変えることができたのはなぜなのか。

傍聴人という客観的立場にいるからだ。印象が変わっても困ることがなくプライドも傷つかない分、素直になれるのである。普段の自分より、傍聴しているときのほうが柔軟な思考ができているとも言える。

第一印象がどうであれ、その後の評価は変わっていい。いくら一目ぼれした相手でも、付き合いだして態度が豹変したら、別れようとするだろう。そうしないと、ずっと悔やむことになるからだ。自分がズタズタにされてしまうとなったら、第一印象をひっくり返すことに迷いなど生じない。

人間関係は、時としてそのように断絶してしまうこともあるが、通常の人付き合い(会社内の関係、友人関係など)は緩やかに続くことが多い。その際、第一印象を時の経過とともに修正を施し、相手の“イメージ時計の針”を現在に合わせることも大切になる。特に、対人関係のよしあしが仕事の実績に直結しがちなビジネスマンにとっては。