いざというとき、自分の身を守ってくれるものは何か。その筆頭は「法律」だ。「プレジデント」(2017年10月16日号)の「法律特集」では、マネーに関する6つのテーマを解説した。第6回は「商標権登録の大穴」について――。(全6回)

ピコ太郎の流行語「PPAP」が勝手に商標登録された

2017年4月11日、東京・港区で世界中でパイナップルを盛り上げた人としてドールから感謝状を贈られるピコ太郎さん。同年1月「PPAP」の商標権を無関係の第三者に出願されたことで話題になった。(時事通信フォト=写真)

2017年1月、タレントのピコ太郎がヒットさせた流行語「PPAP」が、大阪のベストライセンス(BL)という会社に勝手に商標登録出願され、問題になったことをご存じの人も多いだろう。

商標権とは、商品やサービスの名称、ロゴマークの独占使用を認め、他社の商品やサービスとの識別を可能にし、ブランドの信用と価値を守る権利だ。知的財産権の一種だが、著作権のように創作の完成と同時に発生する権利とは、異なる点がある。先に権利を申請した者に所有権を認めるのだ(先願主義)。つまり、早い者勝ちで、商標を先に使用したかどうか(使用主義)は関係がない。極論すれば、他社の商標を横取りすることも可能なのだ。先願主義を取っているのは、誰が最初にその商標を使い始めたか、客観的に判断することが難しいからだ。特許庁への出願を基準とすれば、誰が一番早かったのかが明確になる。

しかし、商標登録される言葉には一定の制約が設けられており、ブランドやロゴの認知度、使用実態なども審査対象となる。PPAPのケースでは、BLには自社の業務としての使用実態がないため、商標登録は事実上、困難だろう。

では、登録の見込みがないのに、なぜ出願したのか? 実は、商標登録には先願主義を悪用して、後から出された出願を妨害できるカラクリがあるからだ。