先天的な病気や障害のため、たんの吸引や経管栄養などの「医療的ケア」が必要な子供が増えています。国の推計では約1万7000人。医学の進歩を背景に、10年前の2倍近くになっています。国立成育医療研究センターは子供と家族をサポートするため、2年前、東京・世田谷に医療的ケアを提供する短期入所施設をつくりました。初代のハウスマネージャーは元NHKアナウンサーの内多勝康さん。53歳での転身を決めた経緯を聞きました――。

50歳を過ぎてから異業種への転職

私がハウスマネージャーを務める「もみじの家」は、公的な医療機関が運営する日本初の「医療的ケア児」と家族のための短期入所施設です。私は2016年3月にNHKを退職し、4月からこの施設の初代ハウスマネージャー(職場長)となりました。

内多勝康・「もみじの家」ハウスマネージャー

番組の取材を通じて福祉関係に興味をもち、NHK在職中の2013年に社会福祉士の資格を取っていました。国立成育医療研究センター(以下、センター)の関係者から「もみじの家」ができることを知らされ、「ハウスマネージャーになりませんか」と声をかけられたときは驚きました。福祉の世界への道が開けて嬉しい気持ちもありましたが、50歳を過ぎてから異業種への転職です。もちろん悩みました。

ただ、私の中で徐々に「新しい現場に飛び込んでみたい」という気持ちが膨らんでいき、最終的にはお引き受けすることにしました。

医療的ケア児について、厚生労働省は「医学の進歩を背景として、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な障害児のこと」と説明しています。

在宅で医療的ケアを必要とする19歳以下の子供は全国に1万7000人以上います。ですから、このような施設を必要とするご家族は、日本全国にたくさんいらっしゃるわけです。そういう意味で「もみじの家」は各地に広がる支援モデルとなれるのかどうか、試金石としての注目も集めています。

当初は対象をセンターに通院しているお子さんとそのご家族に限定していましたが、開設して3カ月後から、どなたでもご利用いただけるようにしました。ただ、利用前に一度、当センターで診察を受けていただくことが必要です。