「プラネタリウムを持ってきましたよ」「星は数えきれないほどたくさんありますから、たくさんお願いしましょうね」。長期入院している子供や重度心身障害の患者さんらのために、移動式プラネタリウムを持って全国の病院を訪れ、星空を見せる。高橋真理子さん(47)は、山梨県立科学館の職員として16年間働いた後、2013年に独立して、この「病院がプラネタリウム」というプロジェクトを始めた。病院から外に出られない人たちに宇宙を見せる「宙先(そらさき)案内人」。その活動について聞いた――。

表情が明るくなり、目が輝いていく

宙先案内人の高橋真理子さん。

病院の中にいる人は、なかなか外の空気や自然に触れる機会がありません。このことに気づいたのは、私が山梨県立科学館で職員として働いていたときでした。当時、私は科学館のプラネタリウムで星の解説員をしていましたが、小児科のお医者さんに出会ったことがご縁で、一年に一度、小型のプラネタリウムを持って病院に出かけていたのです。

現在使っている移動式プラネタリウムは直径4メートルくらいの大きさで、空気を吹き込んでドームを膨らませ、そこに入ってもらいます。ドームには5~10人の患者さんと、付き添いのご家族やスタッフも合わせて15人ほどが入れます。ドームの中は独特の雰囲気があって、これが日常の世界を忘れて、頭上の星空の世界へ没入させてくれるのです。

プログラムでは、まず、その日の夜に見える星空を投影します。最初は街の明かりがついているときの星空。その後、カウントダウンをしながら街の明かりを消して、「ゼロ!」で満天の星を映し出します。

その瞬間、ドームの中に「わぁっ」という声が広がります。重度心身障害者の方の表現はさまざまですが、足をバタつかせたり、声が大きくなったりして喜んでくれます。彼らの表情がパァッと明るくなり、目が輝いているのが、こちらにもわかります。

医療機器に繋がっていて移動がかなわない患者さんには、私のほうが病室にお邪魔をし、病室の天井に星を投影して解説をします。ベッドに横になっていることの多い患者さんには、天井はもってこいの投影場所です。何しろ、そのままの状態で見ることができるのですから。ここでも天井に満天の星空が映った瞬間、声が上がります。