ビジョンに賛同したメンバーが、強力チームを作る

──玉川さんはとても順風満帆に見えますが、失敗から学んだ経験をお聞かせいただけますか?

【玉川憲社長(以下、玉川)】普通の企業だと、失敗のイメージは「怒られる」とか、ネガティブですよね。僕らは「失敗を責める奴がいたら、そいつを責めようよ」と思っています。新しいことに挑戦しているので正解なんて誰もわからない。果敢に挑戦し、スピーディーにやることが大事です。躊躇して「失敗したら怒られる」というと誰も手を出しませんよね。

永井孝尚『売る仕組みをどう作るか トルネード式仮説検証』(幻冬舎)では、本稿で紹介した仮説検証思考について詳しく解説している。

──むしろ積極的に失敗しろと?

【玉川】ただ「失敗を責めるな」というテクニック論だけでもダメ。根本的な取り組みが必要です。そもそも「技術的なイノベーションで、世界のヒトとモノをつなげて、世界をより良くしよう」と考えて、ソラコムを始めました。ではどんなチームでやるか? これを創業前に〈リーダーシップ・ステートメント〉という15の言葉でまとめて、賛同したメンバーにソラコムへ入社してもらっています。ただ固執しすぎも良くないので、このリーダーシップ・ステートメントも、3カ月に1回、全員で読んで変えています。

──徹底していますね。

【玉川】スタートアップは2通りのやり方があります。「まず黒字化して堅実に成長」と「一度に大きく資金調達して一気に成長」。僕は後者を選びました。だからスピード命。躊躇していると、社員30人いたら30人の給料分、お金が減ります。「食糧1カ月分しか積んでいない漂流船に乗って宝島を目指すなら、何を躊躇しているんですか」ということです。おかげさまで今は漂流船状態を抜けましたが(笑)。だから、そういうビジョンやカルチャーに賛同した人が集まったとがった組織でやっています。このチームが半年間で一気にリリースとかに挑戦して、うまくいくととてもうれしいですね。

──無関心な人や反対派がいるとうまくいかないことも多いですよね。

【玉川】賛同メンバーだけなので、その点は楽ですね。このリーダーシップ・ステートメントも外向けに公開しています。たとえば“Likability”は「一緒に働いて楽しいチームでいよう」という意味です。チームに属する個人もフェアでオープンな誠意ある言動をする。ソラコムは販売もサービスも、お客様が自分で行うセルフサービスモデルなので、幅広く多くの人に使っていただきたいと思っていますから。