江戸時代の寒い時期がいつまで続いたかには諸説ありますが、幕末には猛暑の夏が何度か続いた記録があり、1850年頃で終わったと考えられます。とくに人口100万を抱えた江戸の人口密度は世界有数であり、シーボルトの記録によると1800年代前半には、瓦屋根の蓄熱で現在の「ヒートアイランド」に似た現象が起こっていたようです。

「小氷期」以降の地球は、再び温暖化に向かいます。20世紀に地球の平均気温は約0.74度上昇しましたが、東京の年平均気温は地球温暖化とヒートアイランド現象の影響で2.47度も上昇しています(東京では第2次世界大戦前から明瞭なヒートアイランド現象が観測されている)。

ところが2000年頃から、地球規模の気温上昇には上げ止まりの傾向が見られます。これは「地球温暖化の停滞期(ハイエイタス)」で、太平洋の海水温に見られる10~十数年規模の変動や、地球温暖化の熱が海洋に吸収されたことなどが要因と考えられています。

ハイエイタスはおそらく10~20年で終わると見られ、今後はまた温暖化が加速する可能性があります。この間にいかに世界がCO2排出量を抑制する策を見つけられるかが、人類が持続的な発展を継続できる鍵になるかもしれません。

江戸~東京の気温が緩やかに右肩上がりのトレンドを描いていること、1990~2000年の上昇は過去30年の平均気温を上回って顕著になっていることが見て取れる(財城真寿美氏・三上岳彦氏作成)

財城真寿美(ざいき・ますみ)
東京都立大学理学研究科博士課程修了。神戸大学国際文化学部で学振特別研究員、2009年に成蹊大学講師、翌年より准教授。
 
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