※本稿は、本多利範『売れる化』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
品揃えも、価格も、負けているのに……
先日、ある人からこのような質問をされました。
「うちの近所のコンビニの真横に、大きなスーパーが新しくできたんです。品揃えが多くて商品も安くて、これはあのコンビニは潰れるなと思っていたら、潰れないんですよ。以前と同じようにコンビニにもお客さんが入っていて、それでいて新しいスーパーも繁盛しているんです。これはどうしてなんでしょう」
実はこのような質問は、これまでも何度も受けてきました。たしかにこのような疑問を抱くのも理解できます。
コンビニとスーパーでは重なる品物が多いのも事実ですから。例えば牛乳やジュース、パン、お菓子、日用品、弁当、サンドイッチ、酒類など、同じカテゴリーの商品で、しかも同じメーカーの商品もたくさんあります。
しかもスーパーのほうが品数は豊富で、たいていの場合は価格も安く設定されています。ナショナルブランド(NB)商品も、大量のロットで仕入れるスーパーでは比較的低価格で提供することができますし、独自のプライベートブランド(PB)商品で安価なシリーズを展開しているところもあります。
しかし、それでもコンビニとスーパーは共存できます。それはなぜでしょうか?
スーパーとコンビニの共存を不思議に感じる人は、おそらく、「品揃えが豊富、商品が安い=客が喜ぶ」という発想にとらわれているからでしょう。
たしかにそのコンセプトで店づくりをして成功しているブランドもたくさんあります。
多くのスーパーやディスカウントショップなどは、商品の豊富さや価格の安さで勝負をかけて成功していますし、衣服のユニクロやH&M、インテリア用品のニトリなども基本的に同様のコンセプトと言えるでしょう。
高級服や高級インテリア用品だけでない選択肢を用意することで、喜んでいる消費者はたくさんいます。ただ、いつでもどこでも、商品の豊富さと安さを消費者は求めているのかというと、それは少し違います。商品の豊富さや安さに代わる価値を提供することで、十分それらに対抗できる商売をすることは可能なのです。
実はスーパーとコンビニで迷う人はいない
どうしてスーパーとコンビニが共存できるのか。
答えは、両者に対して人々が求める役割が異なるからです。
人は買い物に行こうとして、「今日はスーパーに行こうか、それともコンビニに行こうか」とは迷いません。おそらく最初から「今日はスーパーに行く」「コンビニに行く」と決めているはずなのです。
例えば、ある人がいて、夕食にみそ汁と魚、野菜料理を食べたいと思ったとします。もしその人が料理好きで、自分で調理したいと思えば、スーパーに行き、野菜コーナーで野菜を選び、鮮魚コーナーで魚を買い、レジに向かうでしょう。
けれども、もしその人が仕事で疲れていたり、時間がなかったりした場合はどうでしょう。一から調理をする時間も気力もない。そういう日はコンビニでサバの味噌煮やきんぴら、サラダなどを買って、自宅で盛り付けるかもしれません。
同様に、朝寝坊して朝食を食べる時間がなければ、前日にスーパーで買ったパンとハム、レタスで朝食をつくるのではなく、近所のコンビニでサンドイッチとコーヒーを買うでしょう。