コンビニはタクシーに似ている

弁当をつくる時間がなければ、コンビニでさまざまな弁当を選べます。

そう、コンビニは時間のない人のために、自分たちでそれをつくる手間をかけさせず、すでに完成した品々を提供する役割を果たしているのです。

そう考えてみると、コンビニはタクシーと似ているのかもしれません。

自分の足で歩けば目的地にたどり着くことはわかっていても人はタクシーを使います。疲れていて荷物がいっぱいだ、雨が降っている、待ち合わせに遅れそうだ、などとさまざまな理由で人はタクシーを利用します。

タクシーに乗れば当然料金も発生しますが、それでも支払った金額に相当する利便性を重視するからこそ、私たちはタクシーを利用するのです。

素材を多く扱うスーパーに比べ、コンビニは弁当や惣菜、中華まんやチキンなど、調理済みフードのカテゴリーに特に力を入れています。それは時間の足りない現代人に、気軽においしいものを食べていただきたいからです。「家庭のキッチン」として利用していただくことが、コンビニの一つの存在意義と言えるでしょう。

「タイム・コンビニエンス」という価値

時間の節約という意味では、食べ物だけに限りません。

例えば家のトイレットペーパーや洗剤が切れていれば、駅前のドラッグストアまで行かなくても、家の近所のコンビニで買うことができます。銀行に行く時間がない人は、コンビニのATMで用を済ませられます。役所が開いている時間に行けなければ、公的書類をコンビニで受け取ることもできます。自宅で宅配便を受け取れない人には、コンビニが代理で荷物を受け取っておくし、急遽証明写真などが必要な場合は、複合機で写真をプリントアウトすることもできるのです。

その用を済ますことに本来かかる時間や手間を、コンビニが代わりに提供することで、空いた時間を人々はほかのことに使うことができます。

それが、コンビニが提供している一つの価値、「タイム・コンビニエンス」なのです。

コンビニが近所に一軒ある。それはつまり、食料品店、弁当店、コーヒーショップ、酒店、たばこ店、日用品店、文具店、書店、銀行、郵便局、宅配会社、役所、写真店が、そこに存在しているのと同じことなのです。

わずか平均30坪足らずの小さな店で、このすべてを賄うことができる店など、世界広しといえども日本のコンビニ以外には存在しないでしょう。