カルビーは3月27日、松本晃会長兼CEOが6月下旬の株主総会後に退任すると発表した。松本氏は就任9年のカリスマ経営者だが、その「まわり」で働いてきた人は「記憶してほしいことは全部お金で表してくれ」と言われたという。どういうことか。『社長の「まわり」の仕事術』(インプレス)で、カルビーなど6社を取材した上阪徹氏が、その意味を解説する――。

抜擢されるのはどんな人?

エネルギッシュに動く経営トップのもとで日々、奮闘している人たちがいる。ビジネス書の読者の多くは、そういう人たちにこそ学べるのではないか。

そんな思いから『社長の「まわり」の仕事術』(インプレス刊)という本を書いた。取材したのは、カルビー・松本晃氏、DeNA・南場智子氏、ストライプインターナショナル・石川康晴氏、隈研吾建築都市設計事務所・隈研吾氏、中川政七商店・中川政七氏、サニーサイドアップ・次原悦子氏という6人の経営トップのまわりで仕事をしている13人だ。

今回は13人のインタビューの中から、「社長が“抜擢したい”と思う人の3条件」をピックアップしたい。

「できる理由を考える」人

まず1つ目は、「できる理由を考える」という人だ。経営トップが口にするのは、やりたいこと。しかも、それは多くの場合で簡単にやれることではなかったりする。しかも、そんなことは経営トップ本人もわかっているのだ。だから「できる理由」を考えてくれる人は、常に必要とされる。

上阪徹『社長の「まわり」の仕事術』(インプレス刊)

サニーサイドアップの社長室・副室長の谷村江美さんは、勤務していた大手コンサルティング会社の顧問先から、サニーサイドアップの次原悦子社長を紹介された。初対面から20分ほど話すと「ねぇ、あなた、ウチに来ない?」とおもむろに言われたという。

「次原はよく言っているんですが、できない理由を考えるんじゃなくて『どうしたらできるか』を考えてみよう、と。私もそれを信じています」

自分がいっぱいいっぱいのときに、新しいことが投げ込まれたりすると、「どうしてなのか」と感じてしまったり、それが顔に出てしまったりしかねない。しかし、マインドを変えることで、そうはならなくなるという。

「自分自身も含めて、いかに気持ち良く、上機嫌でいられるか。もちろん、気分が乗らないときもたくさんありますが、根底にはそんな姿勢があるべきだと思っています」