社長を「あっ」と言わせる

中川政七商店でデザイナー、さらには園芸ブランド「花園樹斎」のブランドマネジャーに抜擢された渡瀬聡志さんはこんなことを語っていた。

「うちの会社のモノづくりのやり方って、基本的に温故知新なんです。どんなタイプの温故知新をやっていくか、です。平たく言えば、こういういわれがあって、それを現代の流れの中に置くとどうなるか、と。それを、どのパターンで作っていくか、というものを常に意識しています」

ただ、一方でこだわっていることがある。

「“あっ”と言わせてやろう、というのは常にありますね。ヘンにまとめらないように考えています。割とまとまるタイプなので、そこは意識しています」

同じく中川政七商店の執行役員バイヤー、細萱(ほそがや)久美さんの言葉はとても印象的だった。入社10年。執行役員への抜擢は、およそ想像していなかった。

「本当に“商店”という規模のところに入ったつもりでしたし、いろんなモノづくりを学んでいこう、くらいのつもりでしたので。出世欲よりも、自分がやりたいことをやらせてもらいたい欲のほうが強いんです。やっぱりモノが大好きなので、いい商品を作って、お客さまに喜んでもらえる。それが、やりがいがあり、楽しい仕事です」

出世欲のない人が抜擢され、出世していく。これもまた、ひとつのサプライズであり、ひとつの本質かもしれない。優れた「社長のまわり」に、学べることは多い。

上阪徹(うえさか・とおる)
ブックライター。1966年兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに雑誌や書籍、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人超。著書に『書いて生きていく プロ文章論』(ミシマ社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)他多数。
(写真=iStock.com)
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