相続時、親の宅地を80%減額して評価

相続税の基礎控除額が2015年に引き下げられ、ささやかなマイホームを持つ人も課税の射程内に入ってきた。

親が持ち家を持っているものの、「『小規模宅地等の特例』を適用できるから自分は大丈夫」と考えている人もいるだろう。小規模宅地等の特例は、被相続人(亡くなった人)が住んでいた自宅を相続する場合、一定の条件を満たせば宅地の評価額を330平方メートルまで80%減額できる制度。たとえば5000万円の宅地に特例が適用されれば、評価額は1000万円になる。

ただ、安心するのは早い。服部梢弁護士はこう警告する。

「小規模宅地等の特例には落とし穴があります。適用できると思って油断していたら、実際は適用されずに多額の相続税を払うことになったケースは珍しくありません」

宅地を相続する相続人別に解説しよう。わかりやすいのは、被相続人の配偶者が宅地を相続するとき。この場合は無条件で特例を適用できる。

親の介護で実家に泊まり込むと「別居」扱いに

注意したいのは、配偶者以外の相続人が宅地を相続するときだ。たとえば親と同居している子が相続する場合、相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内)まで親の自宅を所有かつ居住していれば適用対象になる。

問題は、どこから同居になるか。たとえば自宅を持つ子が毎週末、親の介護のために実家に泊まり込む二重生活をしているのは別居と評価されてしまう。

申告期限まで保有・居住という条件も見落としがちだ。

「ほかにも多額の相続財産があり、相続税の支払いがほぼ確定している人が、納税資金をつくるため、申告期限前に親の自宅を売却するケースがあります。そうなると特例を適用できない可能性があります」