35歳、衰えは突然やってきた

ところが、体の衰えは35歳でドカンとやってきた。ある日タンメンを食べたところ、奥歯に違和感を覚えた。何かが挟まっている……。爪でつかんでみたらニラだった。

オッサンになると歯茎が痩せて歯と歯の間に隙間ができ、そこに食べ物が挟まる。だから楊枝が必要になる、ということは聞かされていたが、ついにオレもシーハ(東海林さだおが使う楊枝使用時の擬音)をするオッサンになってしまったか! と愕然とした。実際はシーハで収まるどころの騒ぎではなく、デンタルフロスを用いなければスッキリしないような状況になっていたのだ。以後、歯に挟まるものは多彩なバリエーションとなっていく。

モヤシ、エノキ、ネギ、肉、アサリ、イカ、タコ、春菊、ミカンの皮などが容赦なく歯の間に挟まる。1日2回、食べ終わった後は必ずデンタルフロスを使わなくては気持ち悪く感じる体になってしまった。また、朝起きてうがいをすると歯周病のせいで血が水に混じるようになった。これがもう9年続いている。

歯の次にやってきたのが走力の衰えである。走ることがとにかく億劫になった。もはや駅までの300mほどを走る気力もない。20m先の横断歩道の青信号が点滅している場合、以前はダッシュをして信号が赤になる前に渡ろうとした。だが、今は電車を1本逃そうが、赤信号を待つことに何のためらいもなくなった。「走るくらいなら数分のロスなんてどうってことない」とまで思うのだ。

走りたくない理由は、走り終わった後にぜーぜーと息切れしてしまうのがイヤなのに加え、正直オッサンがオフィス街を必死の形相で走っているのは「みっともない」と思うようになったからだ。また、筋トレももうやめてしまい、部屋においてあるベンチプレスにはもはや触れることもなくなった。今は持ち上げられる重量もMAX65kg程度に落ちていることだろう。

名刺を見返しても顔が思い出せない

髪の毛の量は20代と比べたら明らかに減っているが、2013年頃と比べたら若干増えたようにも思える。といっても「ハゲまであと数年か!?」という状況だ。白髪は現在1本しか確認できていないが、鼻毛はもはや白髪だらけである。この鼻毛の白髪というヤツが厄介で、黒くする必要がないからかどうかは不明だが「ワシ、伸びるぞ!」ということだけに専念しているかのごとく、やたらと伸びが早いのだ。それらを爪やピンセットを使ってえいやっと抜くのだが、これが案外楽しい。

他には耳毛が生えるようになり、眉毛は伸びが速くなるとともに、ぶっ太い毛が激増。しかも5つ又の枝毛などもちらほら混じっているのだ。下の方の話になると、小便のキレが悪くなり、終了後はとある部分を押して尿道に残った小便を強引に外へ送り出す必要も出てきた。

さらに、老眼もひどい。もともと近眼で、裸眼では視力0.1のためメガネをかけているが、ニンテンドー3DSをやるとき、携帯電話を見るとき、新聞・雑誌・書籍を読むときはメガネを外さなくては見えなくなった。電車に乗ってまずやることは、読み物やゲームを取り出す前にメガネをジャケットの胸ポケットにしまうことである。夏になると私は基本的にTシャツ・短パンなのでメガネをしまう場所がなくなってしまい、シャツの首部分にかけることとなる。

ここまでくると身体的には完全に枯れたオッサンのようだが、衰えはこれだけに限らない。30代中盤まで、名刺を見返せばその人の顔をすぐに思い出すことができた。だが、今はよほど初対面のときにたくさんしゃべった人や、特徴的な名刺だったために印象が強かった人でもない限り、思い出せない。最近は「はじめまして」とあいさつをしたら、「実は、3年ほど前に××のカンファレンスでお会いしているんですよ」「うひゃ、ごめんなさい!」「いえいえ」なんて展開になることばかりだ。