人間が見落とすわずかな病変をCT画像から目ざとく発見、糖尿病の進行を予測し、服薬や生活習慣の改善をスマホで指導……。健康寿命延長への貢献が大いに期待できる、AI医療の最前線を、東京大学医学部卒でスタンフォード大のMBAを持つ「情報医療」CEOの原聖吾氏が解説する。

がんを自動的に識別 グーグルやIBMも参入するAI医療

現在働き盛りの世代の「健康寿命」に大きなインパクトを与えそうなのが、急速に進化しつつある「AI(人工知能)医療」だ。グーグルやIBMをはじめとするIT大手はもちろん、さまざまなベンチャー企業も参入している。

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「AI医療の核となるのは、深層学習(ディープラーニング)という技術です」と言うのは、国立がん研究センターや京都大学などとAI医療システムの開発を手がける、情報医療CEO(最高経営責任者)の原聖吾氏だ。

深層学習とは、コンピュータに膨大なデータを読み込ませ、そこから何らかの法則やルールを見いだす手順を、コンピュータ自身に編み出させること。例えばグーグルは2012年、約1000万枚の画像を用いた深層学習で、コンピュータに猫の顔を識別する能力を持たせることに成功した。大量の猫画像を分析することで、コンピュータは機械なりの視点で「猫らしいものを見分ける手順」を身に付けたのだ。