謝罪の語彙はバリエーションが大事

しっかり謝らなくてはならない場面では、明らかな謝罪の言葉を使います。ただし、「申し訳ございません」「お詫びします」と同じ言葉ばかりでは芸がありません。下記の表現くらいは、バリエーションとして持っておきましょう。

「謝意を表します」
「深謝いたします」
「陳謝いたします」
「ご容赦ください」

「謝意」は、お礼を述べるときにも使います。文脈によってどちらの意味かを使い分けます。

「深謝」は心から詫びること、「陳謝」は事情を述べて詫びることです。「陳謝」と言ったら、相手は当然事情説明を求めます。自ら事情説明をしたくないときは、「深謝」と言っておきましょう。

「容赦」は許すという意味で「勘弁」とも同義ですが、許しを請うときには「ご容赦」のほうが改まった感じがします。

齋藤孝『大人の語彙力大全』(KADOKAWA)

謝罪会見でよくある「このたびはお騒がせしました」は、謝罪の言葉ではありません。どんな問題が起きたのか、誰が問題を起こしたのかについて、何一つ回答しておらず、場合によっては「そっちが勝手に騒いだだけ」ととらえられてしまいます。

ちなみに私の経験では、謝罪の際に菓子折りを持って行くというのは意外に効果があります。人はどんなに怒っていても、いったん物を受け取ってしまうと怒りがいくぶん和らぐものなのです。ただし、お菓子の“重さ”はポイントです。謝罪するのにおせんべいやクッキーのような軽いものだと、謝罪の気持ちも軽いと思われます。ここはやはり、ずしりと重さのある羊羹などが適しているようです。

トラブルは、起こすもなくすも言い方次第。語彙力がピンチを救うと心得ましょう。

齋藤 孝(さいとう・たかし)
1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。著書に『三色ボールペン活用術』『語彙力こそが教養である』(以上、KADOKAWA)、『声に出して読みたい日本語』(草思社)など多数。NHK Eテレ『にほんごであそぼ』総合指導。
(写真=iStock.com)
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