黒田続投は既定路線、焦点は副総裁人事
日銀は2017年12月21日の金融政策決定会合で、政策変更を見送った。2017年は、次々と大幅な政策変更を繰り返した日銀総裁・黒田東彦が、初めて動きを止めた年となった。
一方、総務省が12月26日に発表した17年11月の完全失業率は2.7%で24年ぶりの低水準。17年11月の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)は前年同月比0.9%となり、消費増税の影響を除けば3年1カ月ぶりの高い伸びを示した。
日経平均株価も2万円を優に上回る水準で推移、日本経済はリスクを抱えながらも明るい展望をはらみ、居心地のよい温度で推移していると言ってよいだろう。
ただ、年明けのマーケットは波乱の予兆を宿している。日銀が2018年1月9日の公開市場操作で超長期国債の買い入れを減らしたことが、「金融緩和の出口に向けた地ならし」との観測を呼び、9日、10日の両日で東京外国為替市場の円ドル相場は一気に1円超も円高が進んだ。日銀の政策転換に向けて市場の警戒感は高まり、その反応は敏感になっている。
こうした中で、2018年春に任期を迎える黒田日銀は、新体制となって、どう動くのか。安倍政権の経済運営を見極めつつ、来る18年の日本経済と金融政策の行方を展望してみたい。
まず、18年春からの日銀の新たな布陣を点検してみたい。
総裁については黒田の続投が既定路線となりつつある。人事権を握る首相の安倍晋三が、アベノミクスの象徴ともいえる黒田を交代させるとは考えにくい。黒田も2期目に意欲を示しているとみられる。
一方で、二人の副総裁については交代説が浮上している。まず「民間枠」の岩田規久男は、元学習院大学教授で、一貫したリフレ派。デフレ脱却を目指す安倍政権で、黒田を理論的に支える学者として起用された。ただ、75歳と高齢で体調不安も抱えている。本人も、退任を望んでいる」(日銀関係者)とされる。
そこで、後任の副総裁として浮上しているのが、元財務官僚でスイス大使の本田悦朗だ。
本田は官房参与も務めており、安倍の側近として知られている。特に、大胆な金融緩和で、デフレ脱却を実現するリフレ政策の意義を安倍に熱心に説いた一人だ。メディアのインタビューなどでも「次期総裁」に意欲をにじませている。
2017年11月下旬には、内閣官房参与の浜田宏一とともに首相官邸で安倍と会食したことも話題を呼んだ。「黒田さんが続投となれば、総裁の目はないが、首相との距離感を考えれば、副総裁での起用は十分に考えられる」(官邸に近い筋)との見方が出ている。
副総裁候補には、米コロンビア大教授の伊藤隆俊、早大教授の若田部昌澄の名も挙がる。伊藤は、黒田が財務官時代に副財務官として支えた経験があり、金融政策についての黒田のブレーンの一人だ。「ただ、総裁でなければ、人事を受けない可能性が高い」(日銀幹部)という。一方の若田部は、リフレ派の論客として知られており、有力な副総裁候補となりそうだ。
日銀プロパーの副総裁は、中曽宏から、黒田を実務、理論の両面で支えた理事の雨宮正佳に交代する可能性が強まっている。