どうすれば「集中力」を維持できるのか。サッカー日本代表として活躍してきた遠藤保仁さんは「強弱を意識するといい」と話します。90分間、同じ状態を維持しようとするのではなく、リズムやテンポといった「強弱」を意識することで、無理がなくなり、安定したパフォーマンスが出せるようになるといいます。仕事にも役立つ「天才」の知恵をご紹介しましょう――。

※本稿は、遠藤保仁『「一瞬で決断できる」シンプル思考』(KADOKAWA)を再編集したものです。

PKは蹴る瞬間だけ集中する

サッカーの試合中は、常に頭の中で考えながらプレーをしていますが、唯一、何も考えずに、無心になる瞬間があります。それはPK(ペナルティーキック)を蹴る瞬間です。

遠藤保仁『「一瞬で決断できる」シンプル思考』(KADOKAWA)

PKを成功させるいちばんの秘訣は、ギリギリまでGK(ゴールキーパー)の動きをじっと見て、GKの重心とは逆方向に蹴ること。このとき、何も考えずに、GKの動きだけに集中する。ボールもほとんど見ていません。

そういう意味では、無心というよりも100%集中している状態だといえるでしょう。このボールを蹴る瞬間にいろいろな邪念が浮かぶと、GKの動きを見極めることがむずかしくなるのです。

人間の集中力が持続する時間は、想像以上に短いといわれます。相手の話を真剣に聞いているつもりでも、1分もすれば別のことを考えていたりするもの。サッカーも90分間フルで100%集中することは不可能です。また、思考のクセとして集中しようと思えば思うほど、雑念が浮かんでくるものです。

だからこそ、ここぞというとき、一瞬で100%の集中力を発揮することが大事になります。PKのとき、僕は蹴る瞬間しか集中していません。だから、蹴る前はリラックスしている状態で、相手選手に話しかけられてもとくに気になりません。よく集中力を削ぐためにわざとPKのキッカーにプレッシャーをかけにくる相手選手もいますが、まだ集中している状態ではないので、まったく邪魔にはならないのです。

集中の時間は短ければ短いほど、高いレベルで神経を研ぎ澄まし、いわゆる無心に近い状態になれるのだと思います。仕事でもプライベートでも、本当の意味で集中できる時間はかぎられることを理解しておいたほうがいいでしょう。そのうえで集中すべき時間とそうでない時間のメリハリをつける。そうすることで、結果的に質の高い学びやクリエイティブな仕事ができるのではないでしょうか。

では、どうすれば、集中力をコントロールすることができるのでしょうか。