今年の流行語大賞は「インスタ映え」だった。インスタには「食べ物」の写真があふれている。なぜSNSでは「食」が人気なのか。それは「そこでしか体験できない」からだろう。そんなトレンドを逆手にとって、東京のファッションシーンを牽引してきた2人のカリスマは、「そこでしか買えない」という服をたびたび企画している。その狙いはなにか。藤原ヒロシ氏と清永浩文氏の対談記事をお届けしよう――。
藤原ヒロシ氏(左)と清永浩文氏(右)の公開対談の様子。(撮影=プレジデントオンライン編集部)

わずか5分で満席になった特別対談

いまやネットで服を買うことは当たり前になった。その結果、SNSの影響も大きくなっている。「店頭で買う」から「ネットで買う」へ。そして「雑誌を見て買う」から「インフルエンサーの投稿を見て買う」へ。ファッションをめぐる消費行動は劇的に変化している。

そんな状況に、ファッションシーンのカリスマたちは、どのように向き合っているのだろうか。11月30日に奥渋谷の書店「SPBS」で、「SOPH. CO.,LTD.」(以下、SOPH.)の清永浩文代表と、ファッションデザイナーの藤原ヒロシ氏の対談が行われた。対談のテーマは「SNS時代のファッション」。チケット発売からわずか5分で満席になったという貴重な対談の模様をお届けする。

インフルエンサー任せの怠け者になるな

――「SNS時代のファッション」というテーマについて、どう思われますか。

【藤原】どちらかと言えばみなさんより僕が勉強しないといけない(笑)。SNSを見てモノを買いたいと思ったことがあまりない人間なので。

――SNSの普及は、ブランドのPR方法を変えましたか。

【清永】PRの仕方は確かに変わってきました。特に最近は、あまり事前のプロモーションをしない時代になっている気がします。発表から時間が空きすぎてしまうと、その間に飽きられる。だからSOPH.でも、早くても発売の一週間前、遅いときは前日というふうになってきました。

【藤原】でもファッションは展示会で発表してから発売までタイムラグがありましたよね?

【清永】世界的にはファッションショーからそのまま販売というのが主流になってきています。日本でもガールズコレクションがやっていますね。ただ、SOPH.の展示会は一般公開していないクローズドなものなので、あまり関係はないんです。

ファッション誌の影響力は年々落ちている

――SNSにいつ、どんな情報を出すかが重要になるということでしょうか。

【清永】SNSでのPRはツイッターもインスタグラムもLINEニュースも全部やらないといけない時代になって。そこで何をどう出すか、うちのPRスタッフはかなり苦労しています。よく言われるようにファッション誌の影響力は年々落ちてきていて、ブランドがダイレクトに提供する直前情報のほうが、消費者に届く時代になってきています。しかも、そこではありとあらゆるものを情報公開しなきゃいけないというか、変な話、パンツの中身まで見せないと響かないような感覚です。

【藤原】どうなんだろう? 僕はツイッターをやっていなくてインスタグラムだけなんですが、清永くんが言うように、「SNSは自分に関するものをすべて見せないといけない」って感覚を持っている人が多いですよね。でも僕は逆だと思っていて。実はSNSって、めちゃくちゃコントロールしやすいメディアだなと。見せたいものだけ見せて、嫌なものは見せなければいいから、ブランドのイメージはすごく作りやすいじゃないですか。