霧島火山の新燃岳が300年ぶりの噴火を続けている最中にタイムリーな火山の解説書が出た。著者の一人は南極観測隊にも参加したベテランの地球物理学者で、国立極地研究所の名誉教授。もう一人は東京大学地震研究所の浅間火山観測所や霧島火山観測所で豊富な観測経験を持ち、昨年「震災予防協会賞」を受賞した火山学者。圧倒的な現場の魅力を知りつくした彼らが全ページカラーの火山フィールド案内を刊行した。

実は、火山学ほどビジュアルに訴えるものはない。火口からほとばしる真っ赤な色のマグマは感動を呼び起こす。火山学は実験室だけの科学ではない。刻々変化する噴火の推移や降り積もった堆積物を詳細に観察しながら、学問を進めていくのだ。

噴火はいつも起きているわけではなく、ましてや学びたいときに噴火に遭遇できるわけでもない。自ずと過去の噴火事例から学習するのが常道となる。私も研究用の噴火写真を数多く持っているが、ダイナミックで噴火を知るうえで勉強になる。かねてから私は普段なかなか目にすることのできない火口底の写真などは、多くの人に見てもらいたいと思っていた。今回カラー本でありながらこの価格を維持できたのも、新書という媒体のおかげだろう。日本の活火山の噴火の激しさと美しさを知ってもらう絶好の機会が誕生した。

日本にはいつ噴火しても不思議ではない活火山が108個もある。本書の第一の魅力は、代表的な活火山が記述されていることである。特に、気象庁発表の噴火記録に基づきわかりやすく記載している。

たとえば、北海道からはAランク活火山である有珠山や北海道駒ケ岳、東北からは近年噴火した岩手山、秋田駒ケ岳、鳥海山、吾妻山、安達太良山、磐梯山が取り上げられる。いずれも風光明媚な観光地でもあり、訪れる際のガイドブックとして、ぜひゆっくりと繙ひもといていただきたい。火山の知識があると必ず旅の魅力が増すに違いない。

なお、九州地域では噴火中の霧島火山・新燃岳の噴火履歴と災害もくわしく書かれている。また、地下でマグマの蓄積が進み、活動が活発化する可能性の高い桜島も登場する。普段テレビや新聞で報道される内容のベースを知っていただきたい。

本書には、最新の研究成果である絶対重力計やミュオンを用いた浅間山の観測についても触れられている。また、章末のコラムでは、著者たちが経験した噴火にまつわる興味深いエピソードを紹介する。現場で火山と語り合ってきた彼らならではの感性を垣間見ることができる。

新燃岳では立ち入り禁止区域に入る人がいるが、非常に危険な行為だ。火山はいつ何どき活発な噴火を再開しても不思議ではない。本書が多くの人にとり活火山の知識を得るきっかけとなり、自然の偉大さを感じつつ、自分の身を自ら守る助けにしていただければ幸いである。