食料品をはじめとした日常の買い物に困難を感じている人が増えている。こうした60歳以上の「買い物弱者」は約700万人。自治体の「買い物送迎」は回数が少なく、心身ともに疲れる。だがタブレットなどで「ネットスーパー」を使いこなすのは難しい……。高齢者に使い勝手のいいサービスとはどういうものなのか。対策を進める4社の取り組みを取材した――。
「買い物難民は過疎地域に限らず、全国にいる」
郊外に大型スーパーができて、昔から地元にあったスーパーが撤退した。地元に残る若者が減り、高齢者の単身世帯が増えた。利用者が少なくなり、公共交通機関が減った。高齢で免許を返上した――。こうした理由で、食料品をはじめとした日常の買い物に困難を感じている人(買い物弱者)が増えている。2015年の経済産業省調査では、60歳以上の買い物弱者数は700万人とされており、メディアでは「買い物難民」とも呼ばれている。
この問題を解決しようと徳島県で12年に設立されたのが、「移動スーパー とくし丸(以下、とくし丸)」だ。住友達也代表は、「買い物難民は過疎地域に限らず、全国にいる」と実感している。困っているレベルや人数で考えると限界集落をはじめとした地方の買い物難民は多いが、都会でもいると言う。
「われわれの販売車は、東京の四谷(新宿区)でも走っています。なぜかと言えば、例えば、スーパーの看板がすぐそこに見えている場所に住んでいても、片側4車線の幹線道路を渡りきれなくて、中央分離帯で立ち往生してしまうおばあちゃんがいるからです。彼女にとって買い物は決死の覚悟を必要とします。なんとか店までたどりついても、帰りに荷物が持ちきれず、何度も往復しなければならない。買った商品を届けてくれるスーパーもありますが、数百円の配送料をとったり、数千円以上の買い物なら配送料無料などの条件があり、利用する側のハードルが上がってしまうんです」(住友代表。以下同)