端的に言えば、モルモン教は、当時のアメリカにおけるキリスト教の教えや旧約聖書に描かれる世界観を独自に再解釈したもので、分類的にはキリスト教系の新宗教であるといえる。ベースはキリスト教であるが、先に述べた多妻婚などは、旧約聖書に見られる部族社会の世界観を当時のアメリカで再興させたものであると考えられる。
モルモン教信者のみで行われる、一般には公開されない儀式などもある。これらをいくつか紹介しておこう。
前提として、モルモン教の行事は世界共通のプログラムで行われる。聖典や機関誌、学習教材などはすべてアメリカで出されたものを布教先用に翻訳したものである。そのため、日本独自の教えなどは存在しない。
また、誤解を恐れずに言えば、日本のモルモン教信者はあまり目立たない。これは、布教活動を行う宣教師のほうが社会との接点が多く、一般信者はほとんど普通の生活を送っているためだ。ただ、食事に関するタブーがあり、コーヒーなどのカフェインを含むものやアルコール、タバコを摂取することができない。日本人信者は、社会人になった際などの飲み会で、大変心苦しい気持ちになることがあるという。
日本国内には「神殿」が3つ
モルモン教では、教会にあたる施設を「ワード」と呼ぶ。現在、日本国内にワードは265カ所、これらを統括する伝道部は全国に7カ所存在する。ワードでは、聖餐会という一般のキリスト教でいう礼拝が行われる。
ワードとは別に、特別な儀式を行う「神殿」もある。この神殿は、モルモン教の信者のみ入ることができる施設である。モルモン教の信仰で最も重要な要素を持っており、「地上で最も神聖な、人が神と聖約を交わす礼拝の場所」と教義上で位置づけられている。
神殿は世界で157カ所に存在しており、日本では東京都港区にある「東京神殿」(1980年建立)、福岡県福岡市にある「福岡神殿」(2000年建立)、北海道札幌市の「札幌神殿」(2016年建立)の3カ所がある。