景気の回復ぶりを伝えるニュースばかりが並ぶ。10月に日銀が発表した9月の短観でも企業の景況感は10年ぶりの高水準だという。それなのになぜ実感に乏しいのだろう。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、企業の売り上げが伸びていないことが問題だと指摘する。

「伸びているのは、企業の収益性です。それは設備投資や人件費の抑制、原油価格の低位安定などによって実現したもので、肝心の売り上げの伸びは昨年までの4年間で平均1.5%にとどまり低迷したままです」

収益重視では賃上げに進まない。

「ITバブル崩壊以降、多くの企業が雇用の確保か賃金の上昇かという選択を迫られるなかで労働者側も『雇用が確保されるなら賃上げされずとも仕方ない』と容認に傾き、その流れが依然として続いています。近年は人手不足により完全雇用に近い状態と言われますが、これは偽りで、実態は職探しは容易にできてもいい仕事には就けない。労働の単純化やマニュアル化によってワークシェアリングが進んだ結果、賃金は上がらず、購買力も高まらないままです」

好景気を実感するには賃金上昇が一番だが、そのために雇用確保を犠牲にできるか。容易な選択ではない。