大企業出身者だから、前職で活躍していたから、と高い賃金で採用した中途社員の成績がまったく振るわない。慌てて解雇し、訴訟を起こされるケースが増えているそうです。その解決金は、賃金1年分では済まないことも。労働問題に強い弁護士が、社長の安易すぎる採用に警鐘を鳴らします――。
*本稿はプレジデントオンラインの経営者向けサイト「社長の参謀ブログ」の記事です。

社長、彼のどこが「いい人材」なのでしょうか?

どの企業を訪問しても、社長から出るのは「島田くん、誰かいい人いない?」の一言だ。その嘆息を耳にするたびに「社長の感覚だけで採用するのはやめたほうがいいですよ。後々もめますから」と忠告するのが顧問弁護士である私の役割になっている。

採用に関して、とくに頭が痛いのは中途採用である。中小企業では、即戦力を求めるあまり、中途採用者の占める割合が高くなる。企業の長期的繁栄のためには、ぜひ新卒採用に挑戦していただきたいのだが、そこまで余裕がないのが現実。ただ、この中途採用、実に問題が多い。とくに営業職の中途採用は要注意だ。

写真はイメージです。

「島田くん、いい人材が見つかったのよ」

この言葉を聞くと、「本当に大丈夫かなぁ」と大いに不安になってしまう。「いい人材」の根拠がまったく不明だからである。中途採用に失敗する原因は、社長の根拠なき過剰評価にある。そもそも、その人は別の会社で別の商品を売っていたわけで、自社の商品を売ることができるかどうかは未知数なはずだ。それでも社長は、「いい人材」と言い張る。これを勝手に『中途採用狂詩曲』などと名づけてみた。狂詩曲の結末は、たいてい「給料は高いのに、まったく仕事ができない。辞めてもらいたい」というものだ。

また、「ブランド」が正当な人物評価を歪めてしまうこともある。大企業に勤務していた人が採れたとき、社長は「わが社に優れた人材がやってきた!」と浮足立ってしまう。ところが、大企業出身の中途社員は周囲とぶつかってしまうことが多い。前の会社のスタイルに固執してしまうからだ。何度も「前の会社では」と言われると、ほかの社員は面白くない。「そんなに前の会社がいいのなら、なぜうちにやってきたんだ」と、次第に人間関係がぎくしゃくしてくる。心理学者のアルフレッド・アドラーは、すべての悩みは人間関係にあると指摘している。まさに正鵠を得た指摘だ。

資金も人材も豊富な大企業は、文化的風土が中小企業とまったく異なる。異文化の人材を取り入れる際には、それなりの覚悟と戦略が必要である。安易に取り入れてしまうと、社内に軋轢だけを生み出すことを忘れないでいただきたい。