「苦しい」が7割近く、子育て世代の負担感
日本人は貧しくなっている。国民生活基礎調査によると、1985年の世帯当たりの所得は493万円。これは94年には664万円にまで増えた。ところが以降、ほぼ一貫して世帯収入は下がり続けている。2013年現在では528万円と2割近く減っている(図1)。
当然、生活は苦しくなる。同調査によると、世帯の生活意識について、92年には57%の人が「普通」と答えていたが、14年には「普通」は34%に減る一方、「生活はやや苦しい」「大変苦しい」と答えた世帯は62.4%だった(図3)。
負担感が強いのは子育て世代だ。同調査で「児童のいる世帯」は「やや苦しい」「大変苦しい」の合計で67.4%となり、全世帯より5ポイントも高かった。一方、「高齢者世帯」は58.8%で3ポイント以上も低かった。
図1の高齢者世帯の所得推移はこれを裏付ける。この20年で全世帯が2割近く所得を減らすなかで、高齢者世帯の所得は300万円台で推移している。この源泉は年金だ。図4をみると、高齢者世帯の56.7%が収入のすべてを年金に頼っていることがわかる。
図3にある通り、1992年当時、約6割の生活意識は「普通」だった。これがいわゆる「一億総中流」という日本独特の生活意識だ。ところが、2014年には「普通」と答える人は34.0%に減り、62.4%の人が「生活は苦しい」と回答している。ゆとりのある生活を送れている人は、わずか3.6%。日本人はどんどん貧しくなっているのだ。
いったいこの国はどうなるのか。次回からは「税金」や「介護」といったテーマをあつかう。結論を先取りすれば、日本はこれから「貧しい国」に転落していく。われわれはその現実を踏まえたうえで、将来に備えておく必要がある。
ちなみに「長生きしないから大丈夫」は通じない。国の簡易生命表によれば、男性の4割、女性の7割が85歳まで生きるのだ。この「長い老後」において、ゆとりを確保できるのは、現実を直視できた人だけだ。